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2019年 04月 15日 ( 1 )

旅日記(てらこや新聞164-167号 海住さんのコーナーより)

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ロンドン(イギリス)②

ロンドンは寒かった。けれど、そこは、笑顔、驚き、ため息とさまざまな感情を見せる表情いっぱいの都会だった。


 ザ・ビートルズの名アルバム「アビーロード」のジャケットの写真の横断歩道を探し、写真に撮っていると、クルマで通り掛かった若い男性が窓を開け、「何撮っているんだよ。ハハハハ」と声に出し、笑顔を向けてきた。「わかっている、わかっている、ソレ、撮りたいんだよな」とでも言いたそうだった。のちにニューヨークの街角では「お前、何撮っているんだよ。そんなもの撮らずにアメリカの女の写真を撮れよ、ほれ」と運転席からポルノ雑誌を見せつけてきたトラックの運転手がいた。


 が、ロンドン郊外に出向いて行って、ロードマップを頼りに歩いて探し当てた
EMIスタジオ前のアビーロードの横断歩道は、ビートルズファンにはおなじみの風景だけに見ず知らずの通りすがりの声掛けにも、気持ちが通じ合っているようで楽しかった。


 夜、暗く寂れた街角で、カメラを首にぶら下げ、長時間、行き来する人々の後ろ姿を撮っていた。カメラには大きく延びたレンズと、ストロボなしで撮るためのミニ三脚を装着している姿はさぞや異様だったろう。路地のコーナーでハッと出くわした人は警察官だった。その一瞬、かれは、わたしの胸のほうにぶら下がっている黒い物体を見て表情をギクッとこわばらせたのがわかった。黒く大きなカメラは脚付きでマシンガンのように映ったのではないか。

けれど、すぐにカメラであることを認識し表情を緩めてくれた、丸腰(銃は持たない)と言われていた、良い意味で職務に誇り高きロンドン市警のお巡りさんを驚かせてしまいほんとうに申し訳なく思った。とても紳士的な方だったので申し訳ない気持ちだ。

「お前、アメリカに土産(罰金)を置いていきたいのか」とすごんできたロサンゼルスの白バイとは随分違った。

前から歩いてくる2人連れの30代初めくらいのスーツ姿の男2人は、 気持ちよく酔った明るい笑顔だった。わたしの前まで来ると、ふいに、背中を向けたてズボンを下ろし、お尻をまくり腰を突き出してきた。

状況によってはなんて失礼な奴ということになりかねないが、わたしは思わず吹き出してしまった。彼らも。嫌がらせではなく、なにか罰ゲームのような罪のない遊びであるらしく、お互い笑いあった。


 楽しく旅の街歩きをするうえで重要な要素は、どんなところに泊まるかだ。ロンドンと言えば、
B&B。ベッド&ブレックファーストの略で、朝食付きの個室が提供される民宿だ。もともとは一夜の下宿のようなものだったのだろう。比較的安くてよく勧められるロンドン名物だが、有名になるにつれ宿代は高くなり、劣悪なところも増えたのではないか。当時、安くて3000円はしたし、当たり外れは大きかった。

売りであるはずの朝食もオーナーの人柄しだいで、朝食は焼きトマトのトーストではなく、ポテトチップスだけというところもあるらしい。わたしのところは、ケロッグの箱が置いてあって、適当に牛乳をかけて食べろ式のセルフサービスだった。ロンドンに到着して最初の夜はB&Bにしたが、2日目からは民間のユースホステルにした。古い邸宅を丸ごと宿泊して、大部屋に二段ベッドをぎっしり詰め込んだところに寝ることになるが、もともとが大邸宅だけに木の階段のしつらえやロビーの雰囲気などがレトロでシック。一泊の料金が1000円もしなかった。それに友達ができる。

寒くて暗いけど、居心地が良くなってきたロンドン。だが、そろそろ旅の続きを考えなければならない。その前に、イギリスに来るまでの道中で出会ったイギリス人に電話を入れて、会える人には再会しておきたい。10月にザルツブルク(オーストリア)で出会ったイギリス人マシューは、3か月の休暇を取ってヨーロッパからエジプトに向かう道中だったので、もう帰ってきているはずだ。イギリスに来たら自分の家に泊まっていけよと、住所と電話番号を教えてくれていた。

ポーランドの古都クラカフで知り合い、ワルシャワ(ポーランド)の街を案内してくれた英国人のジョナサンは「エディンバラ(スコットランド)はとても美しい。イギリスに行ったら、行くといい。友達を紹介するよ。絶対に連絡するんだよ。とてもいい奴だから」と親切にしてくれた。

プラハで部屋が同じになったオーストラリア人の体育教師もロンドンにいる。ここにくるまでに、イギリスに行けば手を差し伸べてくれる人たちと出会いがあった。

ロンドンより北はるかにあるスコットランドに行くのは、ロンドンの寒さと暗さからたじろぎ断念した。マシューの住んでいる街に行くことにした。グロウスターというイングランド南西部の地方だ。ロンドンからだと北西に、ウエールズの町に向かう列車に乗る。 (1995年12月1日~8日)


by terakoya21 | 2019-04-15 08:30 | 新聞最新号

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