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Bonjour! (てらこや新聞35号 谷先生のコーナーより)

東京見聞録 第三巻 第一章

“I’ll do my best.”(私は最善を尽くします。)

年明け早々、私には大仕事が待っていた。それは、バトントワーリング全国大会で選手とともに一汗、いや何汗もかくことだった。

大会前日のバス移動、私たちは毎年のように富士山に感動し、都会の町並みに目を見張った。横浜中華街での昼食後、バスは 宿泊先の千葉へと向かった。窓越しに見た、船の往来する港や車の並走する道路は、そこが人・モノ・情報が行き交い、混ざり合う場所なのだと証明しているようだった。

コーチとスタッフ一同は大会会場前で降ろされ、会場内への下見へと向かった。入り口付近には徐々に人が集まり始め、受付開始の時刻には大会関係者で埋め尽くされた。私たちも人の 流れに乗り、控え室、入退場口、演技フロアなどを見て回りながら翌日の日程を確認した。私は、この時になって急に全国大会へ来たという実感が湧き、緊張の一波が押し寄せるのを感じた。

今回の会場、幕張メッセでは、演技フロアや観客席のあるイベントホールから少し離れた場所に選手専用のホールが設けられていた。ウォーミングアップエリアと荷物置き場を兼ねたそのホールには、大きなスクリーンが2台用意され、選手はその前に座って観覧することになっていた。
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本番当日、私たちのチームはかなり時間に余裕を持って会場入りした。本番直前には、前日から何度も口にしてきた「何とかなる」という呪文も効力を失い、不安と緊張の波はとっくに満潮を過ぎていた。そのおかげで、私は「とにかく選手の使う手具の準備と片付けに集中すればいい」と自分に言い聞かせることができた。いよいよ入場口のカーテンが開き、私たちは演技フロアに飛び出した。それからの約5分間はあっという間に過ぎ、客席の反応や演技の出来を確かめる余裕などなかった。選手とは異なる退場口から出た私は、一番の大仕事を無事に終えた達成感と開放感に包まれた。

私たちが演技後の片付けから戻ると、スクリーン上ではバトン編成の演技が始まっていた。私は見やすい場所に体操座りをして、ようやく落ち着いて観覧することができた。映像の不鮮明さも観客(=選手)の盛り上がりもイマイチだったが、それにはすぐに慣れた。それほど不満を感じなかったのは、選手専用ホール内では他団体の練習が見られるという特典がついていたからだろう。

大会規定により、ホール内での練習は禁止されていたが、各チームには最初で最後のウォーミングアップ時間が10分ずつ割り当てられていた。この間にほぼ全ての団体が曲に合わせて演技の最終調整をする。普段なら、選手は会場後方の 席から後ろ姿しか見られない。全国トップレベルの演技を間近でしかも正面側から見られること自体、私にはとても贅沢なことに思えた。もちろん、余力を残しながらの演技は本番には劣るものなのかもしれない。それでも、本番前の緊張感が漂う中、自分たちのペースを崩さず緻密に最終調整をする姿には他を魅了する力と自信が満ちていた。私もギャラリーの一員に加わり、目の前の世界に引き込まれ、思わず息をのみ、ただただ圧倒されていた。

……第二章へつづく
by terakoya21 | 2008-02-27 15:30 | Bonjour

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