I LOVE BOOKS (てらこや新聞31号 竹川のコーナーより)

BOOK14:
北村 薫 「ひとがた流し」


社会人になってから知り合った友人が貸してくれた「空飛ぶ馬」が、私が北村 薫さんの本を読んだ初めての時でした。

この「空飛ぶ馬」は「夜の蝉」「秋の花」「六の宮の姫君」「朝霧」と続く「私と円紫師匠」シリーズの第一作目です。日常に潜む謎を解いていく縦軸と「私」の成長を横軸に、とても美しい文体で物語が進んでいきます。

私は、いわゆる推理小説をそれまで読んだことがなく、今もあまり興味はないのですが、この「私と円紫師匠」シリーズは別でした。もちろん謎解きや事件の解明など推理小説の一面もありますが、それ以上に、そこに描かれている人物の心理、心の有り様がじんわりと読者に伝わる静謐な文章に、かなり心惹かれ、私はすっかり北村 薫ファンになりました。

今回ご紹介する「ひとがた流し」は推理小説ではありませんが、この本もまた私をますます北村作品ファンにした一冊です。

中心となる登場人物は、アナウンサーの千波、作家の牧子、写真家の妻である美々という40代の三人の女性で、彼女達は高校時代からの幼なじみです。一人は未婚、残り二人は離婚を経験し一人娘がいます。その三人の女性の生き方が描かれていくのですが…、一人が病にかかったところから、それぞれの思いや願いがひそやかに綴られていきます。

男の友情と比べると女の友情は脆いと思われがちです。実際、私自身にも今、音信不通になってしまった、私にとってはかけがえのない友人がいます。進学、就職、結婚など、取り巻く周りの環境が変わることで、女性の友情は微妙に変化するということは実際にありえることでしょう。
「ひとがた流し」に登場する彼女たち三人は、いつも一緒に行動しているわけではないし、実際会わなかった期間というのも存在するけれど、本当に困った時には、精神的に、そっと、でも、しっかり支え合う間柄を構築しています。家族とはまた違う寄り添い方、距離感の保ち方があり、決して「踏み込めない」ではなく、敢えて「踏み込まない」お互いの領域を保っているこの三人の女性の関係は、とても理想的に見えました。

実際、まだ何年かは残っているけれど私自身も40代を目前にし、大きな病気に繋がるかもしれないという経験をしている友人が私の友人の中にもいるからか、このお話は他人事とは思えない気がしました。

『……女同士だったから、ただの友達で、……会わない時には、一年以上も会わなかった。……でも、今、考えれば、そんな時でも、あなたが…この世のどこかに、確かにいてくれるってことが、ずっと……わたしの、支えだった』

特に同世代の女性に読んでいただきたい一冊です。

(K.T.)

PS:新聞発送後、私に北村薫さんを紹介してくれた友人から
   いち早く連絡があったこと、
   そして、この「ひとがた流し」の紹介で早速この本を読んでくれた友人が
   「一気に読みました。涙があふれて・・・」と感想を寄せてくれたこと。
   嬉しい反応でした。
[PR]
by terakoya21 | 2007-11-14 15:01 | I Love Books

英語塾の寺子屋かめいの元気を発信します


by terakoya21
プロフィールを見る
画像一覧