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夏休み特別編 (てらこや新聞29号 亀井先生のコーナーより)

青少年読書感想文全国コンクール
課題図書紹介


高等学校の部 「ぼくたちの砦」
 ~ A Little Piece of Ground ~

(エリザベス・レアード作 石谷尚子訳 評論社) 定価 1600円
~パレスチナに住む12歳の少年カリームの物語。彼の日常生活を描きながら、パレスチナの現状を伝える。カリームの目を通して写るパレスチナの現状は、活き活きと描かれるカリームたちの日常とは裏腹に楽観できるものではない。しかし、彼らの強さと明るさに、今後の希望を託したくなる物語である。~



「ぼくたちの砦」を読んで 

私には、パレスチナ人の友人がいた。彼と彼の兄弟は、家族をパレスチナに残し、アメリカに住んでいた。故郷の現状について、彼と直接話をしたことはあまりないけれど、パレスチナの情勢が悪いと聞くと、私は必ず「家族は大丈夫か」と心配になり彼に連絡をとった。なんでもないように「大丈夫だよ、ありがとう」と言われるたびに私は安心し・・・逆に彼に励まされた。

「ぼくたちの砦」は、カリームという12歳のパレスチナ人の少年の物語である。イスラエルの入植者や占領軍から彼自身や彼の家族、友人やその家族たちが受ける仕打ちは、とうてい12歳の少年には納得のいくものではない。理由もわからず集団で裸にされる父親を見、先祖代々の土地を突然奪われ、その土地に立ち入れば銃撃され・・・イスラエル人に対してだけでなく、それでも耐え続ける両親や親戚の年長者へも・・・12歳の少年は憤りを募らせていく。平和に慣れすぎている私には、考えられないような生活を彼らは送っていて、単純に考えれば、彼の憤りは至極当然に思える。

しかし、そのカリームの憤りを聞いたおじさんは、イスラエル人の「どいつもみんな、ただの男や女や子どもだったーわしらみたいに。人間なんだよ。」「みんな同じ人間だと認める広い心が、やつらにはない」だけだということを忘れてはいけないとカリームに伝える。

そうだ、イスラム教徒の私の友人たちは、こういう寛大な心を持った人々だった。人に親切にすれば、必ずそれは自分や自分の愛する人々に返ってくる、人に冷たくすれば、必ずそれは、自分に戻ってくる・・・そう言っていつも親切にしてくれたのは、パレスチナ人やレバノン人の友人だった。そんな人間の心を持った人々が住んでいる現状を想像し、やるせない思いに駆られた。しかし、この本が今の私たち日本人に語りかけていることがあるとすれば、実際にイスラエルを倒すことでも、テロと戦うことでもなく、現状を理解することなのではないかと私には思えた。

パレスチナ地域では、1947年に国連がパレスチナ分割決議を出してからイスラエルとパレスチナ人の対立が続いている。私の友人たちも、カリームと同じように生まれたときから紛争しか知らない世代だ。この本は、そんな子どもたちの現状が描かれていて、私たちに世界の紛争地域の現状を思い知らせるとともに、こんな状況下でも強く夢を持って生きる子どもたちに希望を見出せる本だと思う。カリームは、親友のジョーニや新しく出会ったホッパーとともに、時には命知らずな冒険もし・・・成長していく。その中で、平和であるとか紛争中だとかに関係なくどの社会も抱えている問題も少しずつ感じ、考えながら・・・。特に日本の高校生たちは、いろいろ彼らなりに考えながら、是非読んで欲しい本だと思う。



高等学校の部の課題図書は他に次のものがあります。
 「てのひらの中の宇宙」(川端裕人 角川書店) 定価 1,470円
 「泣き虫しょったんの奇跡:サラリーマンから将棋のプロへ」
 (瀬川晶司 講談社) 定価 1,575円

☆青少年読書感想文全国コンクールには、小学校低学年の部、中学年の部、高学年の部、中学校の部、高等学校の部があり、それぞれに課題図書があります。他の課題図書は青少年読書感想文全国コンクール ホームページを見て下さい。 http://www.dokusyokansoubun.jp/index2007.html

(Y.K.)
by terakoya21 | 2007-08-18 14:58 | 本紹介 Kamei

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