Howdy? (てらこや新聞 2020年10月号 竹川のコーナーより)
2020年 12月 29日
~ 金木犀の香り ~
金木犀が芳香を放ち始めると、私は亡き父を思い出します。暑い夏をなんとか乗り切り過ごしやすくなるこの季節、金木犀の香りとともに亡き父を思い出して、少し切ないような気持ちになります。
父が亡くなる数年前に父自ら植えた実家の金木犀は、父の生存中は花を咲かせませんでしたが、父が亡くなってから咲くようになりました。父が植えた金木犀の香りを自らは楽しめないまま亡くなったのだと思うと、しんみりした気持ちになるのです。けれど同時に、父の死後咲き始めるようになったのを思うと、香りとともに必ず父を思い出す、父が残してくれた宝物のように思えて、ほんのりあたたかい気持ちにもなるのです。
母は健在ですが、それでもやはり年をとったなぁと思うことが増えてきました。母の用事を共にするときなど、時々びっくりするような行動をとっていたりしてギョッとしたり、足元がおぼつかない様子を目の当たりにして現実を見る思いをしたりします。
それでも近くに住んで、私が母の用事をしたりすることも、母に子供の相手をしてもらえることも、普段なら特に何ということのない日常が、特に今年のコロナ禍の状況にあっては、ありがたく貴重な時間だなと思うことが増えています。
来年も同じような気持ちで金木犀の香りを嗅ぐのだろうか、どんな気持ちで金木犀の香りを迎えるのだろうかと、今年は特にしみじみ感じる秋です。
(K.T.)