I Love Books! (てらこや新聞 たけがわのコーナーより)
2016年 02月 15日
「中野のお父さん」
(文藝春秋)
大好きな作家、北村 薫さんの最新単行本をご紹介します。
主人公の田川美希は、大手出版社・文宝出版に勤める体育会系の編集者です。美希が仕事の過程で遭遇する不思議な謎について、父に相談を持ちかける…というお話です。題名の「中野のお父さん」は、美希の父のことで、彼は東京の中野に暮らす定年間近の高校教師ですが、美希の持ち込む様々な謎の真相を、あっという間に解き明かしてしまいます。
私には敷居が高すぎてなかなか触れることのない有名な作家…幸田露伴や横溝正史、半藤利一などが出てくる文学ミステリと言えますが、父娘のやりとりが軽快で楽しく読めました。
軽やかに謎を解き明かすお父さんと、いつでも帰れる場所としてそこにある実家の心地良さが合わさって、あたたかな雰囲気に満たされる短編集となっています。
久しぶりに読んだ北村さんの謎解きの物語に触発されて、この後まだ読んでいなかった北村さんの他の作品を次々読んでいるところです。お気に入りの作家の作品には思わず肩入れしたくなります。そんな作家と出会えたことが嬉しいと思えるこの頃です。
( K.T.)