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I Love Books! (てらこや新聞129号 竹川のコーナーより)

BOOK68:毛利甚八 作・魚戸おさむ 画
「家栽の人」(ビッグコミックス)

先日、訃報の知らせに接した毛利甚八さん…。その名前だけではピンとこなかったものの、著作の「家栽の人」のタイトルを聞いた瞬間、学生時代が蘇り、懐かしさとともに淋しさを感じました。

今回ご紹介するのは、このコーナーでは初めての漫画です。「家栽の人」シリーズは全部で15巻あります。
私は小さい頃テレビでアニメを見ることはありましたが、漫画を読むという機会が大学時代までほとんどありませんでした。全く読まなかったわけではないけれど、決して嫌いだとか、両親から漫画はダメと言われたわけではなく、ただ単に、我が家は漫画があるという環境ではなかったので自然と手に取る機会も少なかったというわけです。

「家栽の人」は、大学時代、社会病理をテーマにしていたゼミで取り扱った最初の題材でした。

「家栽」の文字が、「家庭裁判所」の略で「家裁」ではないか、間違っているのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これには理由があります。主人公の家庭裁判所判事・桑田義雄は、仕事の合間にも家庭裁判所内の植栽の世話をするくらい、こよなく植物を愛する人物なのです。少年事件や家事審判を取り扱う家庭裁判所、そこを背景にした物語が、それぞれ章ごとに植物と絡めたお話になっています。それで「裁」の字が「栽」になっているのです。

桑田判事は、草木を慈しむように、人の成長を見守っていきます。背景が家庭裁判所なので、扱う事例は少年犯罪や離婚協議など、話題としては暗く重いものもあるのですが、何が大切なのかをじっくり考えさせてくれる奥深いテーマがあり、人生のヒントになりそうなものがお話の中にたくさん詰まっています。

毛利さんのご冥福をお祈りするとともに、懐かしい学生時代を思い出し、再読したいと強く思った作品です。
( K.T.)

*てらこや新聞129号は2015年12月15日に発行されました。
by terakoya21 | 2016-01-08 16:02 | I Love Books

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