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I Love Books! (てらこや新聞124号 竹川のコーナーより)

BOOK63:柏井壽
「鴨川食堂」 (小学館文庫)

飽きもせず(?) 今回も「食」に関係する小説を、ご紹介します(^_^;)。

食べることはもちろん生きていく上で必要不可欠ですが、ただ「食べる」だけでは味気ない…、体と心の両方の栄養になるものを食べること、一つの食卓を囲んで交わされる会話や楽しいひとときを味わうこと…それらが食べることの醍醐味です。何を食べるのかということと、誰と一緒にどんなふうに食べるのかが合わさって、食べること=幸せという図式につながると思います。

今回ご紹介する「鴨川食堂」という食堂は、京都の東本願寺の傍らにあります。鴨川 流とこいしという父娘が営む食堂ですが、この店には看板がないばかりか、店に辿り着く手がかりはただ一つ-「料理春秋」という料理雑誌に掲載される「鴨川食堂・鴨川探偵事務所-“食”捜します」という一行広告のみという、かなり変わった食堂なのです。縁があってなんとか鴨川食堂に辿り着いた客が、もう一度食べたいものに出会えるという場所です。

やってくる客の注文(もう一度食べたい料理)は、それぞれに思い出の一品なのですが、非常に断片的なキーワードしかありません。その数少ないキーワードをもとに、流さんが思い出の一品を探し当て、再現していきます。思い出の味に再会した依頼人たちは、それぞれ人生の岐路に立ち、その再現された一品を堪能し、新たな人生の一歩を踏み出していきます。

流さんは一見偏屈そうで取っ付きにくそうに思えるのですが、実はとても人情味あふれる人です。娘のこいしと交わされる京都弁での会話が、あたたかで、やさしくて、じんわり心に響きます。

心に沁みる思い出の味を、私も読みながら堪能し、じんわりあたたかな気持ちになりました。

ちなみに…「鴨川食堂 おかわり」という続編が単行本で発売されています。今回の「鴨川食堂」も単行本のときから気になっていたものの、文庫化を待ってから購入しました。読み終えて、かなりお気に入りの一冊になったので、この続編も、文庫化を待つか単行本で買うか…ずっと悩み続けています(^_^;)。
(K.T.)
by terakoya21 | 2015-08-10 09:00 | I Love Books

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