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上越だより (てらこや新聞117号 下西さんのコーナーより)

「ロンドンはおいしい?」

林望さんの著書に『イギリスはおいしい』(文春文庫)があります。単行本の初版は1991年ですから、もう20年以上も前に書かれたエッセーです。林望さんが、大学の研究員として英国に滞在していた当時の英国論です。自ら料理を作り、またグルマンでもある林さんは、文化は一流なのに食はイマイチ、「イギリスの食事はおいしくない」の一般論を逆手に取ったネーミングで、デビュー作にしてベストセラー作家になりました。

私は「イギリスの食事はおいしくない」の先入観を携え、ロンドンに入りました。もっとも、美食には縁がなく、知識もなく、また貧乏旅行なので、

〈Hunger is the best sause.〉

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にならざるを得ませんでしたが。ロンドン滞在中の外食は原則として昼食のみでです。日記の中から、ロンドンの美術館巡りとともに、昼食には何を食したか、拾ってみることにします。

12月28日(晴れ)。ホテルの前から188番バスに乗って、ラッセルスクエア方面「大英博物館」に出かける。入館無料。特別展の「日本の春画展」は有料。けっこう混雑していた。ちょっと見るのもはばかれるような春画の数々。写真撮影がOKだったが、撮る気にはなれない。館内があまりに広いので、改めて出直すことにする。

ランチは、街かどのターキッシュのレストラン。メニューを見ても料理がイメージできない。とりあえず、スープと豆のサラダ(15£)。

1月3日、(うす曇り一時雨)。「リバプールストリート駅」からバスに乗る。バスの始発駅なので2階席の最前列に座れた。「トラファルガー広場」で下車。「ナショナル・ギャラリー」に入る。〈フェルメール〉もある(ヴァージナルの前に座る若い女など)。〈ゴッホ〉もある(ひまわりなど)。〈セザンヌ〉も〈モネ〉も〈マネ〉も〈スーラ〉も〈アングル〉も。〈ジョージ・スタップス〉の「はね馬」の絵を見て、今年の干支だと手を会わせて拝みたくなる。有名な絵画の数々に驚嘆。ルーブルもすごかったが、英国のナショナル・ギャラリーもすごい。しかも、入館料無料。英国の国立の美術館・博物館はほとんどが無料なのだ。所蔵品も運営費も寄付で賄われているらしい。エントランスには、寄付を受け付ける箱があるが、賽銭箱のように見える。

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名画鑑賞を中断して、雨上りの館外のカフェにて昼食。スープ・ハワイアンピザ・魚のフライとポテトフライ・アイリッシュサイダー(23£)。 アメリカンスタイルの賑やかな店内だ。アメリカ人客は陽気だが、話し声が大きいらしい。また、店の選択を誤ったかな。

1月4日(雨のち曇り)。ハイドパークからケンジントン方面へ、9番バスで行く。「ハロッズ」(有名なデパート)の前を通り過ぎ、「ヴィクトリア&アルバートミュージアム」へ。ここも立派な建物で、しかも世界中から工芸品が集められていた。地域ごとに分類されていて、東アジアの区分に、日本コーナーがあった。陶磁器、茶道具、鎧兜、日本刀、着物、漆器、根付などがあった。多くの人の目を引いてなんだか誇らしい。

昼食は、「ポール」のカフェにて、スープ・バゲットサンド・コーヒー。デザートのケーキはおいしかった(22£)。あまり甘くなく優しい味 だった。ケーキやパンの店「ポール」は(日本にも支店があるそうだが)、プラハの店も、パリの店も利用した。それぞれの地域の味がした!パリの「ポール」で買ったクリスマスケーキ より気に入った。

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1月7日(雨のち曇り)。「テート ブリテン(美術館)」へ、ウエストミンスターアベイからテムズ川沿いに歩いて向かう。この街並みも美しかった。「テート ブリテン(美術館)」では英国の作家の作品を中心に展示されている。「ターナー コレクション」を中心に見る。ターナーの絵は、名実ともに英国美術界の至宝であることを知る。ちなみに、美術館の名前にもなっている「テート」は製糖会社のオーナーの名前で、彼の寄贈によっているらしい。決して 「帝都」ではない。館内では、ジェントルマンの卵たち?に会った。紺色のブレザーにグレイのズボン、黒の革靴姿の高校生くらいの少年たちが、美術の学習に来ていた。課題が出ていたらしく、思い思いの作品の前で、スケッチをしたりメモをとったり。

昼食は館内のカフェで。グリルドチキン・フィッシュ&チップス・スープ・コーヒー・ケーキ、セルフサービス方式だったが、味は本格的だった―― 大満足(30£)。

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1月13日(晴れのち曇りのち雨)。「サマセットハウス」の中にある「コートールド協会美術館」へ。〈ゴッホ〉〈マネ〉〈セザンヌ〉〈モネ〉〈ゴーギャン〉〈ピカソ〉〈マチス〉〈モジリアニ〉〈ルーベンス〉〈クラナッハ〉などなど。びっくり箱に入ったみたい。貴族の邸宅らしく、アンティークの家具や銀器など調度品も。(自宅のインテリアにしている)ジグソーパズルの「桃の果樹園」(ゴッホ作)の原画に、まさか対面できるとは。

昼食は、美術館内のカフェで、スープとスコン(15£)。隣の席に、若い韓国人の女性客3人がいた。食後、ウェーターに写真を撮ってもらっていた。そのしぐさが、日本人と違っていた。オーバーアクション?

帰国後、『イギリスはおいしい』を再読しました。文庫本の付録に 「スコンの作り方秘伝」がありましたので、参考に作ってみました。「狐色に焼き色が付き、全体がほっくりと膨れて、スコン独特の〈狼の口〉が開いたら、出来上がり」とのこと。ふくらみが足りませんでしたが、サワークリームとマーマレードをつけて、おいしくいただきました。

外国で食べものを選ぶことは、なかなか大変な作業でした。ロンドンで、洋食に疲れた胃袋に救いをもたらしてくれたのは、「わさび」という店(リーズナブルで、イートインもできる)のお寿司の詰め合わせでした。「砂漠でオアシス」のようで、一滴の醤油がこんなに芳しいとは思いませんでした。

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「Soul food(ソウルフード)」という言葉があります。「魂の源になる食べ物」という意味合いだと理解していますが、私のソウルフードは、やはり、ご飯であり、大豆製品(醤油・みそ・豆腐など)かなと気づきました。異国で手に入らないゆえに強く欲したのかもしれません。「食」には、文化や伝統・歴史が詰まっていて、そして、まぎれもなく「食」が人を作るのだと確信しました。
by terakoya21 | 2015-01-11 15:27 | 上越だより

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