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不思議な宣長さん (てらこや新聞108号 吉田館長のコーナーより)

第三十一話 ノートを作る
和歌子 前回は17歳の宣長さんが何に興味を持っていたかということを話しました。

らん 最初の発見! 日本と中国は文化の構造が違う。次の発見 日本の文化伝統は1000年間変わりなし。日本の文化の中心は「京都」だ。それと、京都の文化の代表が「和歌」で、宣長さんはそれぞれに関心を持っていくんですよね。

和歌子 らんさんも、耳にたこができるくらい、みんなから言われたりしてると思うけど、若いときにはいろいろ興味を持つことが大事よ。

らん 興味は持つけど面倒だし、すぐ忘れちゃいます。

和歌子 面倒なのは困るけど、せっかく興味持ったんだから、そのテーマと仲良く、少していねいにおつきあいしてあげて。

らん 忘れっぽいしなあ。

和歌子 むかしお茶を習っていたときに、お師匠さんから、若いうちに習ったことは体のどこかで覚えているものよ。年を取ってから新しいことを始めようと思ったら、ものすごくパワーがいるし、それが面倒で結局何もできなくなるものよ。一度でもそれを習っていたら、ハードルは低くなるものよ、といわれました。らんさんは、年寄りになるなんて想像できないでしょうけどね。

らん なんか続く秘訣ありますか。

和歌子 好きなことを無理せずにというのが基本だけど、一つおすすめ。

らん何かな?

和歌子手作業よ。自分で本を作る、というと大変だけど、ノートを作るの。でも、まずテーマを決めて、次はタイトル。後は自由だけど、原則として手書きか切り抜いて貼る。普通のノートじゃないぞ、私の著作だという意識を持つためにも、少しノートにもこだわったらいいかもしれないわね。

らん ふーん 楽しそうだけど。

和歌子 宣長は17歳の時に京都に興味を持ったでしょ。まずノートを作るの。

らん どんなノート?

和歌子 紙は少し厚めで、第1冊目は、たて20センチ、よこ16.5センチ。各冊で大きさは異なります。ページ数は62ページ(31丁)です。

らん 何冊かあるの?

和歌子6年間で、6冊。

らん 結構なヴォリュームだ。

和歌子たとえば50音順とか、地域別で編集し直したら、京都の百科事典にもなりそうな充実した内容で、字数はざっと計算すると40万字。

らん原稿用紙1000枚・・・

和歌子 たて1.2メートル、よこ2メートルの日本地図を書く位だから、書いて書けないことはないけどすごいね。

らん 真似できない。

和歌子 でも、そこまでいかなくても、らんさんしか作れない本にすればいいのよ。

らん ノートくらいなら作れるけど・・

和歌子 だからタイトルを付けて、出来ればインデックスを付けるとか工夫すればいいのよ。宣長さんの場合、そのノートのタイトルが、『都考抜書』、トコウバッショ、また「京志」。タイトルの文字も飛白体という変な字体よ。

らん 難しそう。でもタイトルはレタリング少しやったから描けますね。ところで何を書いたのですか、宣長さん。

和歌子 京都に関係することなら何でも。ガイドブックや『続日本紀』、『平家物語』、お坊さんの伝記とか、京都に関係することは片っ端から写していったのよ。

らん でもそれだけじゃないんですよね。和歌にも関心持っていたし・・

和歌子 和歌のノートもあるのよ。『和歌の浦』って言う名前で、最近第5冊目が見つかったけど。

らん これも何十万字というすごい量ですか?

和歌子『和歌の浦』はそんなに多くないわね。

らん 和歌より、京都の方に関心があったということですか?

和歌子 必ずしもそうではなくて、『都考抜書』は京都の知識を集めること、つまりノート作成が目的で、もう一方の『和歌の浦』は、和歌について考えたり、また歌を実際に詠むためのノートという違いから差ができたのかもしれませんね。

らん でも、たとえば『都考抜書』が百科事典にもなるくらいの内容なら、もし、宣長さんがパソコン持っていたら、入力したんじゃないかな。和歌子先生は、手書きって言ったけど、手書きにこだわることはないんじゃないですか。

和歌子 そうも考えられるけど、手書きという手作業によってしか得られないものがある気がします。実は、この二つのノートは、『和歌の浦』第5冊目、

らん 最近発見された本ですね。

和歌子 そう。それ以外は、書いて終わり、つまりそれ以後、使われた形跡は余りないのよ。

らん 役に立たなかったんだ・・

和歌子 書くこと自体が、あるいは書くことでしか獲得できないものを宣長は手に入れたのだと思うの。だから直接ノートは開かなくても、頭に入っているの。

らん 確かに書くと頭に入るような気がしますよね。キーボードよりも・・

和歌子 私は、これも「知の通過儀礼」、通過儀礼ってわかる?

らん ?

和歌子 大人になるための通らなければいけない関門。たとえば日本だと昔は元服、今は成人式とか、厄年とか・・

らん 岡寺の初午さんだ。

和歌子勉強や学問というより、自分で調べて考えていける大人になるためのトレーニングだと思います。

らん 開かなくても、それなりに役に立つんだ。

和歌子 だから、本当に役に立つ使うためのツール、自分のデータベースね、そんなノートは、自分のテーマが確定してから作ればいいのよ。実はそれが『和歌の浦』第5冊で、これが5冊目で終わるのは、スタイルを一新して、次は国学者・ 本居宣長のノートとなるからなのよ。

らん その後もノート作りは続くんですね。

和歌子 50歳くらいまでは作っているわね。

らん それからは・・

和歌子 本を書くことが中心、つまり吸収や編集時代が終わって、発信時代に入ったのよ。

らん そうか、ノートは知識を吸収して、編集するものなんだ。

和歌子これは宣長さんとは関係のない話だけど、英文学者で高山宏という超変わった人がいるの。東大駒場の助手時代に、研究室の蔵書50,000冊をリストアップして、その内容や必要箇所を書き抜いた4,000枚以上の紙の山があるの。「ビブリオマシーン」と呼ばれていて、これは更に増強されて、高山さんの研究活動の源泉となるんだけど、松岡正剛さんに生前贈与されたの。つまり、主題が明らかで、検索自在なんだけど、ノートを作った時にすでに勝負は決まっているのね。

らん すごいなあ。でも私も自分のノートを作ってみます。宣長さんや高山さんの真似はできないけど。

和歌子手書きでね。

らん はい。
by terakoya21 | 2014-04-11 12:10 | 不思議な宣長さん

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