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アメリカ研修日誌 No. 5 part 2 (てらこや新聞98号 大学生のコーナーより)

No.5 5日目

part 1 (←昨日掲載のpart1をお読みになりたい場合はここをクリックしてください)

part 2

その後亀井先生やセシルさんから聞いた話によると、農場で育った奥さんは、幼い頃から、朝4時に起きて家族の朝食の準備をしたり、家畜の世話を手伝ったりしてから学校へ行き、帰宅してからもまた家の手伝いをして、という生活を送っていた。働いて働いて寝てという暮らしをしていた一家だが、最終的に農場を手放さなければならなくなったという。そんな経験を通し、農家の大変さを身に染みてわかっている奥さんは、息子に同じような思いをさせたくないのだ。泥だらけで汗まみれになって働いても、農業だけで食べていくのは難しい。ヤナチェック家でも、ご主人は普段はエネルギーカンパニーにお勤めで、長期休暇の間だけ、コーン畑で働いているというのが現実だ。さらに加えて、奥さんは自身がそうであるから農家の嫁の大変さも知っている。チャッドがコーン畑で働くようになったら、お嫁さんが来てくれなくなるわ!と、気を揉むのも頷ける。

その後ヤナチェック家に滞在中、キッチンやリビングルームでの会話を何気なく聞いていると、チャッドの将来がらみの発言がたまに出てきて耳に留まった。大体、こんな感じだ。コーン畑での作業が大変だった日には、「だから、コーンなんてやめときなさい」というようなことを奥さんが口に出し、コーンがよく獲れるなど 景気のいいことがあった日には「ほーら、みろ!いいじゃんコーン!」という雰囲気がチャッドの表情や発言から漂ってくるのだった。

チャッドは、母親の気持ちを汲み取りながらも、自分のやりたいことを認めてもらおうとしている。だから、お母さんの前でおおっぴらに「将来コーン畑で働きたい」とは言わない。でも、お父さんの仕事には毎日ついていって、「今日はこんなことがあったんだ」と話をする。

「彼が最後まで自分の意思を変えなければ、きっと奥さんは彼のしたいことを認めるだろう。でもその決断の時が来るまで、彼女は反対し続けるのだろう。自分が歩かせたくない道を子供に歩かせないように。それが本当の親の務めなのだ」と亀井先生は言っていた。

それにしても、おじさんたちに交じってこんな大きなトラクターを自在に操り、一緒に作業できる13歳ってすごい。無線で連絡を取りながら、「了解」と、トラクターを赤いトラクターの隣につける。赤いトラクターから伸びた管から、収穫されたばかりの大量のコーンの粒が荷台に落ちてくる。ザーッという音とともに、空っぽだった荷台がみるみるコーンの粒で埋め尽くされていく。あっという間にコーンの山ができると、赤いトラクターと別れ、農道の大きなトラックのほうへ向かう。そこで今度は、トラクターの山盛りコーンをトラックの荷台に移す。

そこまでの作業を、運転席の隣で一通り見せてもらった。途中、「コーン見たい?」とチャッドが聞いてくれて、ふたりでトラクターから降り、収穫される前のコーンを手にとって見せてもらったりもした。この数十分で彼と仲良くなれたとは思わなかったが、一緒に過ごせたことがうれしかった。(その後、姉弟や両親と過ごす彼の姿を目にする機会が徐々に増え、違う一面も知ることになっていくが、とりあえずこの時点では、)「なんてしっかりした13歳なのだろう」というのが、チャッドの印象だった。(その後も好印象に変わりはないのでご心配なく!)

チャッドと別れて、今度は赤のトラクターに乗せてもらった。手を差し伸べられたのは、陽気なおじさんだ。何人かいるご主人のお兄さんのひとりらしい。緑のトラクターよりも広い運転席の隣に腰を下ろすと、さっそく話しかけられた。確か、「日本からここまでどれくらいかかったの?」というようなことを聞かれたはずだ。そんな初歩的な質問に対する受け答えの中で、「きみはヨシエ(亀井先生)のようには話せないんだね?」ということはあっという間に露呈した。(赤いトラクターには私の前に先生が同乗していたのです。)おじさんはその後、最初のトークよりも少しスピードを緩め、私にもわかるような単語を選んで話してくれていたように思う。明るくて優しくておもしろいおじさんだった。会話が進む(主におじさんがしゃべって私が聞いている、もしくはおじさんが質問してくれ私が答える)中で、「ここにきてから、カウボーイは見たかい?」と聞かれた。

つづく…
by terakoya21 | 2013-06-02 07:30 | アメリカ研修日誌

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