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不思議な宣長さん (てらこや新聞98号 吉田館長のコーナーより)

第二十三話 その夜、何が語られたか その2

らん 1763年5月25日(今の暦では7月5日)の夜、場所は松坂日野町の旅籠「新上屋」の2階、薄暗いあんどんのもとで二人の男が低い声で語り合っている。何を話しているのだろう・・

和歌子 あの、ご想像中、申し訳ないのだけど、二人じゃないの。

らん えっ、「松阪の一夜」って、真淵と宣長の二人の対面じゃないのですか。他にもその場にはたくさんの人がいたのですか。

和歌子 実はもう一人、部屋の中にいたのよ。

らん 何してたの? いったい誰?

和歌子 尾張屋太右衛門といって新上屋の近くのお店の人よ。

らん なんだ、3人で賑やかに話していたのか、ちょっとイメージと違うなあ。

和歌子 静かに二人で語り明かしたことは間違いないのよ。

らん でも、いたのでしょ。尾張屋さん。

和歌子 一言も口をきかなかったそうよ。

らん なに、それ! 信じられない。何しにいったのですか。

和歌子 分からないけど、偉い先生が来ていて、宣長が会いに行くというのでついてきたみたい。

らん 笑っちゃいますね。ノコノコついてきたのはいいけど、○△☆※・・・?? わかんねー。

和歌子 もちろん、ついてくるくらいだから少しは関心というか、有名な人に顔つなぎして、なんて気持ちあったみたいだけど、結局、あまりに専門的な二人の話に乗れなかったのだと思うなあ。

らん 二人の話って、『古事記』についてですよね。

和歌子 そう、『古事記』は「読み方」が大切ということと、果たして読めるかと言うことですね。
らんさんなら『古事記』は奈良時代だとか、日本には文字がなかったとかいう一通りの知識はありますね。

らん 余り自信はないけど、教科書に出てくるくらいは知っているつもりですが・・・

和歌子 学校とか教科書が出来て、基礎知識が共有されるようになったけれど、それまでは果たしてどの程度知っていたのか分からないわね。

らん 『古事記』なんていつの本か分からない、と言うことですか。

和歌子 たとえば太右衛門さんが、おい宣長さんよ、『古事記』ってなんだっけ、と小さな声でたずねたら、和銅5年元明天皇の時代に出来た本だと教えてくれる。西暦があると、和銅5年は712年だな、鳴くよウグイスは平安京だ、ええっと710年。確かそうだ。この時に平城京ができたのだから、おお、奈良時代の初めか、となりますね。でも西暦がないから、古いと言ったってどのくらい古いのか分からない。ましてや何で読めないのか分からない。

らん 話をするのって結構難しいんだ。

和歌子だから勉強しなさいって言うのよ。それ何? わかんない。でもおいしいよ、と言うような会話なら別に知識はいらないけどね・・・

らん 難しくって太右衛門さんは居眠りしてたかもしれないね。

和歌子 かもしれないわね。

らん 前回、二人が『古事記』の話をして、そのためには『万葉集』を読みなさいという真淵さんの指導があって、通信教育があるよと真淵さんから提案された、という和歌子先生のお話でしたが、それ以外にもどんなことが話されたのかな。

和歌子 確かなのは「歌」の話ね。

らん SONG、歌う歌?

和歌子 和歌ね。

らん 歌を詠みなさい、ということでしょうか。

和歌子 この日は25日、松阪の新町にある樹敬寺で嶺松院歌会が開かれる日でした。宣長はそれが終わったあとに、新上屋にいってますから、おそらくどんな歌を詠むのかなと真淵先生に聞かれて、今日詠んだのはこんな歌ですと言ってお見せしたら・・

らん なかなか良い歌だねとほめてもらった、

和歌子 とはいかない。こんな歌ではだめだ。『古事記』を読むためには、万葉風の歌を詠みなさいと言う指導があったはずよ。

らん 「万葉風」って、和歌にもスタイルがあるのですか。

和歌子 和歌の歴史は長くて、流行もあるし、しかも歌人にとっては命がけのことだから、歌風というスタイルの問題はとても重要だったのよ。

らん 歌人の世界も難しいんだ。

和歌子 歌人の世界と言ったって、平安時代は貴族の時代でしょ。貴族はみんなが歌人みたいなものだから、とても大事なことですね。

らん 宣長さんの歌風は、どんなのですか。

和歌子 歌風は大きく二つに分かれて、古風と近風があります。古風は万葉風。近風は『古今集』以降となります。近風にもさらに区別がありますが、宣長は「近風」しかも『新古今集』風が最高だと考えていました。実際に詠んだのは『古今集』風ですね。

らん だからだめなんだ。

和歌子 そうね。 それとその夜に話されたもう一つの大切なことは、勉強の心構えです。

らん 勉強の心構え、すごいなあ。ぜひ聞かせてください。

和歌子 これはとても大切な話だからしっかり聞いてね。、と言うところで今日は終わり。話の続きは今度ね。

らん なんだつまんない。
by terakoya21 | 2013-05-27 09:08 | 不思議な宣長さん

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