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上越だより (てらこや新聞95号 下西さんのコーナーより)

青年よ、大的(おおまと)をいだけ!

上越だより (てらこや新聞95号 下西さんのコーナーより)_c0115560_11544488.jpg平成25年が始まりました。巳年です。「十二支のなかでも、へびはちょっとね。」と思っている私ですが、詩の中に愛嬌のある「へび」を見つけました。作者は「へび いちのすけ」 (工藤直子作『のはらうた』童話屋)、題は「あいさつ」

さんぽをしながら/ぼくはしっぽによびかける/「おおいげんきかあ」/するとむこうのくさむらから/しっぽがハキハキへんじをする/「げんきぴんぴん!」/ぼくはあんしんして/さんぽをつづける

また、詩人のまど・みちおは人間に批判的なへびを描いています。(全詩集・理論社)

一本の ヘビ/を まねてステッキを作り/とぐろをまいたヘビ/を まねてバウムクーヘンを作り/とにかく ヘビのまねしかできないのが/人間さ/と ヘビは思っています/
そして/人間も人間のまねも 大きらいな/ヘビは/いつも にょろにょろと/地面を はいまわっています/
人間のやつが/立って/のこのこ歩きまわるものですから


『星の王子様』(サン・テグジュペリ作)の冒頭には、象を飲み込んだ「うわばみ」の絵が登場します。見かけは「帽子」としか見えない絵ですが、想像力を働かせようのメッセージを受け取ることができます。ヘビってやつは、なかなか隅に置けません。

1月13日、京都の蓮華(れんげ)王院(おういん)三十三間堂(東山区)では、恒例の「伝統の通し矢」と「楊枝(やなぎ)のお加持」があり、境内が無料開放されていましたので出かけてきました。

上越だより (てらこや新聞95号 下西さんのコーナーより)_c0115560_11552491.jpg「通し矢」とは、正式には「三十三間堂大的(おおまと)全国大会」といい、全国の新成人たちの弓道の腕前を披露する行事です。京都新聞によると、今年は「初段以上の新成人1471人と熟練者、計1550人」が参加したとのこと。「午前8時過ぎ、境内に設けられた射場で、60メートル先にある1メートルの的を狙う」成人式の風物詩として、ニュースでも振り袖・袴姿のお嬢さんたちの晴れ姿が放映されます。

当日の境内は、順番を待つ「射手」、「射手」を応援する人と観光客とで混雑を極めていました。人垣の後ろでは、つぶさに一部始終を見ることは叶いませんでした。が、「バシィ!」という音に「オー」という歓声が応じ、「カラン!」という音に「アー」というため息が漏れていました。ただ、60メートルはかなりの距離なので試技2射の両方を命中させる人は、1割もいませんでした。(私が見た男子の50人くらいの中では。)境内で順番を待つ晴れ着の女子大生は、愛知から来たといっていました。

どうして三十三間堂で、通し矢が行われるようになったのか。『京都百話』(奈良本辰也編・角川文庫)によると、本堂(内陣の柱間が33あるので、三十三間堂と呼ばれた)は全長約118メートルに対し、横幅はわずか16メートル余り、「この途方もない長大な構造」が「弓道のメッカに仕立て上げることになった」と。「屋根と壁と縁とで区切られ、一直線にのびた空間は、100メートル余りという距離があることもふくめ、腕自慢が競射を 試みるには絶好の条件を備えている」と。では、通し矢の起源はというとはっきりしませんが、江戸時代初め 1600年代にもっとも頻繁に行われたようで、一昼夜、何本の通し矢を射るかという、「矢数」を競うようになったようです。最高記録は、なんと8133本(13053本の試技うち)、貞享3(1686)年紀州藩の和佐大八郎   (23歳の青年)の快挙だったそうです。

上越だより (てらこや新聞95号 下西さんのコーナーより)_c0115560_11555490.jpg三十三間堂は、内陣に、本尊・十一面千手観音座像(国宝)と、風神・雷神像(国宝)二十八部衆像(国宝)と千体(ほんとうは1001体らしい)の千手観音立像(重文)が安置されていることでも有名です。国宝・重要  文化財のもっとも多いお寺といわれています。この内陣に入ってまず雷神像が登場。足下から肉体美の胸を仰ぎ見るように、目に入ってきました。そして1000体の千手観音立像が圧倒的な存在感で迫ってきます。 この日は堂内の混雑が幸いして、ゆっくりと「仏像の森」に留まることができました。

三十三間堂は、洛陽三十三カ所観音霊場の一つでもあり、当日は「楊枝(やなぎ)のお加持」を受けることができました。柳の枝ではじかれた水を浴びると御利益がある、特に頭痛に効き目があるとのことで、内陣を巡回しながらお加持を授かりました。なんとなく、なんとなく、ありがたい感じでした。

『京都魔界案内』(小松和彦著・光文社)には、三十三間堂にまつわる「頭痛持ち・後白河法皇とドクロ伝承」が紹介されています。

法皇の前生は熊野の蓮華坊という僧侶であった。……前生のドクロがいまだ朽ちずに川底にあって、そのドクロを柳の木が貫いて生えている。柳が風に揺れるたびにドクロも揺れ、そのたびに法皇の頭も痛くなるのだ。そのドクロを取り上げれば頭痛も治るだろう。

上越だより (てらこや新聞95号 下西さんのコーナーより)_c0115560_11562228.jpg伝承の出典は定かではありませんが、蓮華坊にちなんで「蓮華王院」と名付けられたそうです。お加持に、柳の枝を使う理由もこんなところにあるのでしょう。

以前1月15日が「成人の日」と定められていました。「小正月」に元服することが多かったからだとか、「小正月(1月15日)」と「成人の日」は関連づけられています。国民の祝日についての法律が改正になり、平成10年から成人の日は1月の第2月曜日になりました。今年の成人の日は14日でした。ハッピーマンデー(体育の日・海の日・敬老の日も)と呼ばれ、アメリカ合衆国の制度を倣ったと聞きますが、日本の文化にはなじまないものです。現実に成人の日を変えたことで、小正月の行事にも「異変」が生じています。

上越市主催の成人式は、4月の第1土曜日です。雪の心配もほぼなくなり(昨年は吹雪いたらしいが)、同級生が全員20歳になっているというタイミングです。また、現在住民票はなくても、事前の申し込みをすれば参加できます。

今年の新成人に送る言葉は、これです。「青年よ、大的(おおまと)をいだけ!」
by terakoya21 | 2013-03-02 14:00 | 上越だより

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