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読書の夏?!夏の読書?!(てらこや新聞88号 かめいのコーナーより)

さて、今年も夏休みがやってきました!!(もう終わろうとしていますが…てらこや新聞88号は7月15日発行のものです)

夏休みと言えば「読書感想文」!…なんだか今、誰かのためいきが聞こえたような気もしましたが…今年も、私は、読みました!「課題図書」…おそらく、学生時代は一度も手にとったことのないものですが、ここ数年、どんな課題図書があるのだろうかと心待ちにするようになっています。
まず、1冊目にご紹介するのは、

第58回青少年読書感想文全国コンクール「課題図書」―中学校の部―

「地をはう 風のように」  
高橋秀雄 著 福音館書店

本についていた帯に「どん底にこそ、本物の幸せがある。がんばれコウゾウ!『チキショウ、チキショウ』と わめきながらも懸命に生きる、少年のものがたり」と書かれていたので、昨年の「スピリットベア」と同じぐらい病んだ子どものお話を想像したのですが、そうではありませんでした。

戦後10年ほどたった鬼怒川流域に住む井上公造は、小学6年生…家が貧しく、彼の住むボロボロの家は、近所の人に「肺病小屋」と噂されたり、学校では、勉強もできず、けんかっぱやく、「気違い野郎」と呼ばれたり…という生活の中で、日光連山を見上げる地域に、田畑をえぐり土煙をあげて吹く風のようなとげとげしい思いを持っていました。けれど、彼は、本当は家族思いの優しい少年。戦後間もなく父親を亡くし、祖母と母キヌエと弟稔との4人暮らしをしていましたが、彼が6年生になると、 家族のために母キヌエが住み込みで働きに出かけます。担任の吉田先生との出会い、学芸会での活躍、「本宅」の忠雄さんとのふれあい、同級生の啓子や転校生文子との交流を通して、自分の人生を切り開くとまで大げさなものではないもの、一歩一歩 次に進むための土台を作っていく様子を描いた物語です。

物語の初めの方に、コウゾウの家庭での仕事である「まきわり」の場面が出てきます。そこで、彼は、まきわりの仕方を工夫する過程で、どのようにすれば楽か、どのあたりが嫌いかなどを考えます。また、「本宅」の田植えのお手伝いをしたり、「本宅」で使わなくなったお風呂をコウゾウの家に運んだりと、いろいろとお手伝いをしながら、生活の知恵を付けていき、そんな中で、転校生の文子に悪く思われたくないために授業も真面目に聞くようになり…だんだんと勉強もわかるようになっていきます。人の成長は、やはり「出会い」からだと…ほのぼのとした気分になれるお話です。

また、戦後10年くらい経った頃、小学6年生というと、ちょうど、我が母と同世代の少年というわけですが、この時代の人びとは、学校で勉強ができる、できないではなく、生活の知恵をお手伝いや生活などから学び成長しているために、学歴や成績ではかる能力ではなく、生活力を持ち、日本を支えてくれている人びとです。そんな時代の人びとが築いてきた社会…しっかり引き継いでいかなければと思いを新たにしました。是非、保護者の皆さんにも読んでいただきたい1冊です。

さて、2冊目 ―小学校高学年の部―

「走れ!マスワラ」 
グザヴィエ=ローラン・プティ 著 浜辺貴絵訳

2004年「ナイロビ・マラソン」で優勝したチェモルキ・チラポンは、子どもの学費を払うために、マラソンに参加したそうです。そして、この物語の主人公は、チラポンをモデルとして書かれた「マスワラ」の娘、シサンダという少女。シサンダは生まれつき重い心臓病を患っています。そして、彼女の母スワラは、シサンダの心臓手術の費用を手に入れるためにマラソンに出ることを決意します。シサンダはスワラのことを「ママ・スワラ」ということで、「マスワラ」と呼びます。

父親のジャバリ(シサンダは「パパ・ジャバリ」ということで「パジャバリ」と呼びます)は、長い間出稼ぎに行っているために不在ですが、シサンダの家には、母のマスワラ、祖母のタバン、おじのベニアの4人が暮らしています。4人が助けあい、パジャバリとも連絡を取り合いながら、シサンダの心臓をいたわり、生活をしていましたが、ある日、シサンダの主治医に手術にかかる費用を聞かされた後、拾った新聞がマスワラをマラソン参加へと導いていきます。マスワラは、もともと走ることが大好きで毎日走っていたので、その能力を生かして、子どもを救いたいと考えたのです。それに、家族が協力し、村人皆が応援し…苦難を乗り越えて、マラソンに参加する…そんな物語です。

私の心に残ったのは、マラソンの賞金のゆくえを含むこの物語の結末よりも、マスワラは文字が読めず、心臓病を患うシサンダだけが、家族の中で教育を受け、文字が読める―拾った新聞の内容を読んでほしいとマスワラにせがまれ、シサンダが読みます―けれど、シサンダはマスワラも、パジャバリも、タバンも、ベニアも敬って、慕って、信じて生活しているということです。そして、シサンダはとても計算が得意なのですが、その ことを「母さんの足は走り好き、私の頭は計算好き」と言い、また、自分は心臓が悪いから、幼いころから、心臓の鳴る回数を数えたり、自分が生き延びた日数を数えたりしているから計算が得意になったと言い、発作を起こし、自分の生命を危険にさらす心臓を恨めしく思いながらも、与えられた時間、授かった能力を生かして生きようとする姿に、今の日本の人びとに欠けている人間として大切なものの存在を感じました。

やはり、親御さんも一緒に読んでほしい物語です。

(Y.K)
by terakoya21 | 2012-08-30 13:46

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