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On the Sideline (てらこや新聞78号 亀井のコーナーより)

“Mr. Speaker, I rise today with a heavy heart…. September 11 changed the world. Our deepest fears now haunt us. Yet I am convinced that military action will not prevent further acts of international terrorism against the United States.”
by Congresswoman Barbara Lee of California
(文英堂 Unicorn English Course II p87より)

あれから、10年。29歳だった私は、もう39歳。不惑の年に近づこうとしていま
す。あのとき選んだ道の結果には満足しながらも、あのとき経験した心の痛みは、伝
え続けたいと思っています。

2001年9月11日にテロが起こり、アメリカが戦争を行うと知ったとき、私の脳裏
に過ぎった恐怖は、真っ先に、最愛の人が戦争に行く可能性が0ではなくなったとい
うことでした。彼は、すでに30歳を越えた大学の先生だったので、この私の恐怖を
笑って否定しましたが、年齢から考えれば、おそらく限りなく可能性は低かったもの
の・・・戦争を行うということは、誰かが戦いに行き、犠牲になるということ、そして
当時の私と同じように愛する人の身を案じる人がいるということーそれが、どんなに
恐ろしいことかを私は実感しました。

そして、当時、私は、予定していた渡米を、自らの責任を考えるとき、キャンセルするしかなくなりました。

1991年、私立の第一志望だった大学の小論文試験で、始まったばかりの「湾岸戦争」についての新聞のコラムを読んで、「どうすれば人間は良心の衣を脱がずにすむか」というような内容の設問に・・・私は、「二度目の※原罪を犯さないためにも」という題名で、アダム・イブ・蛇の関係と国連(国際社会)、アメリカ、イラクの関係を結びつけ、人の信頼関係、信じる心を大切にし、責任を相手になすりつけてはいけないというようなことを書き綴りました。

その湾岸戦争開始から10年半ほど経ったころに、起こったのが9・11。湾岸戦争当時19歳の私が、29歳になっていました。

「議長、私は今日、沈んだ心で立ち上がります。9月11日が世界を変えました。大きな恐怖が私たちを今襲っています。それでも、私は軍事行動がアメリカ合衆国に対するさらなる国際テロリストたちの行動を防ぐことはないと確信しています。」 (訳 亀井好絵)

冒頭の英文は、アメリカのカリフォルニア州選出の下院議員バーバラ・リーによる、
9・11の後、大統領に報復戦争の全ての権限を与えるための決議に対する
審議中の議会演説の一部です。当時アメリカ以外の国の人々のほとんどが
同じように感じていたはずです。そして、彼女は、上下両院で唯1人、軍事
行動への議決案に反対票を投じます。その後しばらく、ボディーガードが
必要となるような生活を強いられても投じられた一票です。

このバーバラ・リーによる演説の一部は、高校2年生の教科書の「ジャネット・
ランキン」というアメリカ初の女性国会議員のお話の冒頭に出てくる一節
です。このジャネット・ランキンは ー 当時のバーバラ・リーのように ― 
唯一人、2つの世界大戦の参戦に反対票を投じたことでも有名な政治家です。



“As a woman, I can’t go to war, so I refuse to send anyone else.”
(女性だから、私は戦争に行くことはできない。だから、私は他の誰をも送ることを拒みます。(現在、アメリカ軍には女性兵士もいます)訳 亀井好絵)

と言ってランキンは、第二次世界大戦への参戦に反対します。この彼女の思慮が、国のリーダーにあれば、戦争など起こらないのに・・・と思います。「私は、実際の戦いにはいけないから、他の誰をも送らない」なんて大統領が言ってしまったら、「弱虫」扱いをされるのでしょうね。

でも、キリストは「右の頬を打たれたら、左の頬をも差し出せ」と、そして、アラーは「慈悲」はめぐり巡ることを教えているはず。また、日本という国は、戦うための武器を持たない。ということは、どんな衝撃的なことが起ころうとも、右の頬を打たれたことは、参戦への理由にはならないはずで、憎しみと不信の連鎖はどこかで止めないと決して止まらない・・・と、10代の私は、湾岸戦争に反対し、20代の私は、アメリカの国民の気持ちを痛いほど理解しながら、アフガン戦争に反対しました。

それでも、私がアメリカを愛しているのは、この2人の女性による「反対」の
たった一票のような勇敢な行動が・・・アメリカの希望であり、偉大さだと思う
からです。

10年前の9月、私は、アメリカという国の人々の多くに冷静になり、
戦争の犠牲になるのは、ワールドトレードセンターで亡くなった人々と同じ、
力なき小さな人々であることに思いを馳せてほしいと強く願いました。

そして、同時に私自身、力なき小市民として、できることを精一杯する
ことを誓いました。2001年9月11日という日は、私から大切なものを
多く奪ったけれど、一番大切なものは私のもとに残り、また、多くのものに
気付かせてくれたように思います。

私も、バーバラ・リーやジャネット・ランキンのように強い意志を持った優しい女性である努力をこれからも続けたいと思っています。

あれから10年目の記念日に寄せて・・・

2011年9月11日

(Y.K)
※ 原罪:キリスト教で、人類が最初に犯した罪。アダムとイブが禁断の木の実を口にし、神の命令に背いた罪。アダムの子孫である人類はこの罪を負うとされる。(大辞泉)
by terakoya21 | 2011-10-04 14:54 | Sideline

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