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不思議な宣長さん (てらこや新聞70号 吉田館長のコーナーより)

第一話 宣長さんは高い所が好き

和歌子 らんさん、あけましておめでとう。お正月は楽しかった?

らん  先生おめでとうございます。楽しかったけどお餅を食べ過ぎました。

和歌子 初詣は行きましたか。

らん  近くの、ほらあの山の上の神社にお参りしました。

和歌子 山って、きっと四五百(よいほ)の森のことね。その隣にある松阪城跡が今年、国の重要文化財になるのよ。

らん  お城って無いでしょ。石垣だけだよ。

和歌子 石垣がすばらしいから、指定されるのよ。

らん  ところで先生、どうして「よいほのもり」って言うのですか。

和歌子 実は、よく分からないの。本居宣長(もとおり・のりなが)の名前は聞いたことがあるで しょ。

らん  一応は。

和歌子 江戸時代を代表する古典研究家で、ことばにも詳しくて、日本中からいろんな人がわざわざ松阪まで質問にやってくる位すごい人なんだけど、でもその宣長も、なぜ「よいほのもり」なんだろうって首をかしげているの。

らん  宣長って『古事記』だっけ、そんな古い本を解読した人だと思ってたけど、私と同じようなことも考えてたんだ。

和歌子 らんさんは松阪城跡にある「本居宣長旧宅」は知ってる?

らん  「鈴屋」(すずのや)、宣長まつりの時、行ったことがあるわ。

和歌子 あの家はもともと魚町にあったの。らんさんが今言った「鈴屋」は二階の書斎の名前なんだけど、二階の窓、大きいの。屋根裏部屋って暗い感じがするけど、窓が大きいから明るくって気持ちがいい部屋なのよ。宣長の自慢の一つは、あの窓から見る景色。

らん  何が見えたの?

和歌子 魚町にあった頃には、四五百森の石垣や木々が見えたのよ。

らん  へえー。

和歌子 ちょうど宣長の頃、松阪の人たちは、自分の家の二階とか三階から、堀坂山が富士山のように見えるとか、たとえば新座町のお医者さんは、昔は白い猪は薬になったそうじゃが、その白猪の山、白猪山が手に取るように見えるんじゃ、と自慢し合っていたの。

らん  部屋からのロケーションを楽しむなんて、なかなかぜいたくですね。今のマンションの広告に使えそう。

和歌子 宣長は何にでも関心を持った人だけど、毎日眺めてる四五百森に興味があったとしても不思議ではないわ。ところでらんさんは、宣長が高い所から眺めることが好きだったことは知ってる?

らん  高い所が好きなんて知りませんでした。

和歌子 富士山にも登ったし、京都では清水寺がお好みの場所よ。

らん  修学旅行で清水の舞台には行きました。京都の町がよく見えました。

和歌子 宣長は「見る」ことに関心があったの。例えば望遠鏡で見る。鏡を見る。高い所が好きなのも見晴らしがいいから。つまり手に取るように見えるから。地図も好きなんだけど関係がありそうね。そうだ、今年は宣長について少しお話ししてあげようか。けっこう楽しいわよ。
by terakoya21 | 2011-01-29 21:32 | 不思議な宣長さん

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