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Bonjour! (てらこや新聞67号 谷先生のコーナーより)

having a sigh

私の住んでいるところは、交通マナーが悪い市という呼ばれ方をする。その市の一市民である私が運転中特に困るのは、前方にウインカーの使い方を間違っている車がいるときだ。ウインカーは、行動に移る前に点けなければ意味がないと教習所で習ったが、中には、交差点を半分曲がったところや、車線を半分またいだところでチカチカとお愛想程度に点す車もいる。「えぇ~、意味ないやん!」とツッコミを入れられるうちはいいが、場合によってはそうはいかない。突然車線変更したり、ブレーキをかけて曲がり始めたりするとき、車はただの危険な金属のカタマリに変わる。いくらクルマ社会と言っても、クルマの中にはヒトがいる。人間が操る車には、ドライバーの意思を知らせるウインカーが必要なのだ。コミュニケーションの不具合が、思わぬ衝突事故を招く。

私の働いているところは、ときどき、変わった塾という呼ばれ方をする。その塾の一講師である私は、授業後のため息の数が増えた。そして、授業中に心の中でつくため息の数も増えた。「いつからなのか」ははっきりしないが、その原因ははっきりしている。YesかNoかで答えられるに質問に、生徒からの答えが返ってこないからだ。内容も、例えば「今あなたは幸せですか。」といった、答えにくいものではない。課題がなかなか進んでいかない生徒への「何か困っていますか。」、または、課題を終えたようなそぶりを見せた生徒への「終わりましたか。」といった、単純だが授業を進める上では不可欠なものだ。最近では日常的になりつつある場面だが、中学時代の繊細な(!?)私なら、その日の授業が成り立たないほど落ち込んでいただろう。今の私は「おいおい、無視なのか?それとも聞こえなかったのか?」と思いながら、もう一度同じ質問をする。それでも返答のないときもそう珍しくはなく、少なからず、私は傷つく。私の神経もそこまで図太くはなっていない。

中には、恥ずかしがり屋な生徒や負けず嫌いな生徒もいるため、黙り込む生徒の姿は以前からあった。声が出せない生徒でも首を振るなり、自分の答えを隠すなりといった意思表示があり、それなりに対応ができた。しかし、私の心に打撃を与える場面には「質問に対する返答」がないというよりは、「質問したことに対する反応」がなく、対応に困る。車に例えるなら、これはウインカーどころの問題ではない。目の前の車が、一体どちらに進もうとしているのかわからない。それどころか、停車なのか駐車なのか、動く気があるのかどうかすら、計りかねる状態で道が塞がれているのだ。授業中の立ち往生には、苛立ちよりもむなしさとやりきれなさを感じる。「この子の目の前にいる私は、一体何なのだろう。」と感傷に浸りたくもなる。そんな気持ちを抱えたまま進める授業は、どこかぎこちない。実際の路上ならレッカー車を頼むこともできるが、教室では自分がけん引して進むしかない。授業が終わって職員室に戻ると、思わずため息が出る。

講師同士の話は、たいてい、教室内での出来事が学校や社会へと場面が移ったらどうなるのかに発展する。今、この塾に通っている生徒も普段は学校へ通い、いつかは社会へ出ていく。そう考えたとき、英単語の正しい発音を知らないことよりも、人とのコミュニケーションを知らないことのほうがはるかに重要な問題だ。それは明日になれば解決する問題ではなく、私ができることなど限られて いるのかもしれない。けれど、今の気持ちを持ち続けることと、次の一手を考えることを諦めてはいけないと思う。

「ため息をつくと、幸せが逃げていくで。」数年前のある日、一人の生徒の大きなため息を聞いた別の生徒が口にした言葉だ。この言葉が本当だとすれば……おっと、また、ため息が出そうになった。

a sigh:ため息
have a sigh:ため息をつく
(米) a blinker /(英) a winker:自動車などの方向 指示器
a wrecker , a wrecking car:レッカー車
a tractor:けん引車、トラクター
by terakoya21 | 2010-11-07 21:42 | Bonjour

英語塾の寺子屋かめいの元気を発信します


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