上越だより (てらこや新聞65号 下西さんのコーナーより)
2010年 09月 17日
7月23日、上越市立水族博物館(上越市西本町)に行ってきました。ここは、道路一本隔てて、直江津海岸というロケーションです。上越でも、7月16日の梅雨明けから猛暑が続いていて、この日も30度を超す暑い日でした。市内の学校は終業式の日でしたから、館内はさほど混んでいませんでしたが、幼稚園児の団体さんの先客があり、にぎやかでした。まるで、マゼランペンギンの群れに紛れ込んだみたいに……。
上越市立水族博物館は、今年開館30周年にあたります。7月17日から8月22日まで、夏季特別展としてイルカショーが見られます。また、創立30年のあゆみとして写真や資料の展示もあります。わたしは、在住20年ですが、ここを訪れるのは初めてです。若いころ行った水族館は、ガラスで仕切られた個室の水槽に 魚が入れられ、名前のプレートが掲げられているだけで、まるで魚のカタログのようでした。水槽の魚の目が、虚ろ!と感じて以来、水族館を敬遠していました。(子供たちも連れてきてあげなかった、ゴメン!)
この水族館の展示のキーワードは、「給餌」でしょうか。
この水族館には、400種10000匹を超える魚がいますが、個別の水槽の他に、トロピカルランド、マリンジャンボという大型の水槽があります。トロピカルランドでは、主に熱帯魚が泳いでおり、ダイバーの手ずから餌をやるという「ダイバーによる餌づけショー」が行われています。横に広い水槽の中では、女性ダイバーの周りを、カラフルな魚たちが群がり舞い、ときおり大きなエイがひらひらと王者(王妃)の風格で魚群を横切ります。
マリンジャンボは、さらに大きな水槽(縦長)で、ここでも「餌」をやりながら効果的に魚の動きを見せていました。魚は餌によって(例えば、アジの切り身やイカや小エビ)その動きが異なります。先頭切って泳ぐ大形魚に対して、食べかすをあさる小形魚。水槽の上の方から、投入される餌を求めて、前後左右にゆったり泳いで餌を食べる魚もあれば、水槽の下の方で右往左往しながら、落ちてくる食べ物を待ちかまえている魚もあります。
屋外では、ペンギンランドとマリンスタジアムがあります。ペンギンランドでは、100羽を超えるマゼランペンギンが生活しており、やはり餌やりを見ることができます。直立するゴマフアザラシの「ジョー君」もここで生活しております。
夏の呼び物はなんといっても、イルカショーです。イルカは、毎年よその水族館からレンタルで上越に出稼ぎ(?)、いえいえ楽しませに来ます。今年は、伊豆・三津シーパラダイスから、2頭の雌のハンドウイルカ(バンドウイルカ)が、6月3日にやってきました。
5歳と6歳の彼女たちにとって、上越がデビューの地なのです。上越でのデビューに向けて、名前が公募され、「アイ」「エツ」と名付けられました。
2頭のイルカと2人のインストラクターは、水面に顔を出すあいさつ・ジャンプ・ともに泳ぐ・などのパフォーマンスを次々と見せてくれました。イルカショーは、イルカにとって虐待か否か、という議論があります。この日わたしが感じたのは、イルカは、とても賢い動物で、しかも人間に好意的であるということ。そして、イルカとインストラクターと観客、三者のほのぼのとした信頼関係があって、ショーが成り立つのだと思いました。そう感じた理由の一つは、インストラクターの男性が、とてもかっこよく見えたからかも!
上越市立水族博物館には、「壁」にも魚が住んでいます。陶板でできたレリーフの魚(館内外の壁面に約5千匹)は、陶芸家、高井進さんの指導のもと、市内外の多くの人々によって、作られたものです。みなが思い思いの魚の形を粘土で作り、高井さんによって色づけされ焼いて完成されます。今年の春、水族館の改装工事の折、この作品も展示されました。
高井進さん(1938年生まれ)は、妙高市出身の陶芸家で、壺や額皿や茶碗などさまざまな作品、味わい深い作品を作っていらっしゃいます。それ以外に、様々なイベントで、様々な人たち(例えば、小学生や障害のある人たち)とともに、粘土をこね、陶板作りを指導していらっしゃいます。そして、いろいろの場所(例えば、JRの駅・学校・病院など)にその作品を見ることができます。陶板作りを通して、人の輪が広がり、創作の喜びが広がります。
水族館を出て駐車場近くの壁面では、陶板の魚が見送ってくれました。タコやイカ、ヒラメやエイ、名前のわからない魚も。おや!陶板の魚には、作者の名前も書いてある……泉・田・祐・彦……県知事の名前でした。