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まえがき (てらこや新聞65号 竹川のコーナーより)

~「今」という時を…~

夏の風物詩の一つ、花火。今夏私が見たのは、入院中の病室の窓から、隣接するビルの向こうに見えた掌ほどの大きさの花火でした。体に響き渡る大きな音もなく、遠くて小さな花火でしたが、夜空に色鮮やかな花を咲かせ、潔く散っていく美しい花火。隣の病室からは、おばあさんの「うぅ~、あぅ…」という悲痛な声が聞こえ、一瞬にして散っていく小さな花火は、なんだかとても切なくて、涙を誘うようなはかなさも感じられました。

けれど私は、翌日に退院を控え、術後の痛みも全くなく、そして、毎日のように夫、母、義父母、そして職場の仲間が病室を訪れてくれた1週間の入院生活を振り返って、なんて幸せなんだろうと思いながら、そのはかない花火をずっと眺めていたのでした。

学生の頃は長い夏休みが楽しみで仕方なかったのに、いつの頃からか、夏、特に8月もお盆の頃になると、盛りを過ぎていく切なさを感じるようになったのは、単に年を重ねたからなのでしょうか。

蝉は短い生を全うするかのように鳴き、花火も人の目に焼き付けるがごとく、その一瞬の美を夜空に描く…そんなことを考えながら小さな花火を見ていて、決して私は切ない思いになったわけではないのです。誰にも明日のことは分からない…分からないからこそ、今目の前の一瞬を生き切っていくことしかできないのだと思ったのです。精一杯生きる「今」の積み重ねで道ができていくのだと思いながら、まだ見ぬ明日が私や私に関わる人たちにとって幸せなものになるよう「今」を生きていくのだと、ちょっと哲学めいた思いを馳せながら今年の花火を堪能しました。

私は、今年見たこの小さな花火をきっと忘れないだろうと思っています。            

(K.T.)
by terakoya21 | 2010-09-04 20:39 | まえがき

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