I LOVE BOOKS (てらこや新聞54号 竹川のコーナーより)

BOOK21: 群 ようこ 「かもめ食堂」

群 ようこさんの著書を読むのは、実に何年ぶりのことになるでしょうか。最後に読んだ本の名も、それがいつだったかも思い出せないほど昔のことです…。

社会人になって数年経った頃、群さんの『無印シリーズ』にハマった時期がありました。「無印良女(りょうひん)」「無印OL物語」「無印結婚物語」「無印失恋物語」「無印不倫物語」「無印親子物語」「無印おまじない物語」…多分、全て実家の書棚にあると思います(~_~;)。軽妙な語り口と、描かれている女性たちの年代が同じくらいで「ある、ある!」と思いながら、またどこか可愛らしくて可笑しい人々に笑いながら、読んでいたのだと思います。

久しぶりに群さんの著書を読んでみようと思った作品が「かもめ食堂」。小林聡美さん主演の同名映画のための書き下ろし作品です。映画版「かもめ食堂」は、当初東京と横浜の二館のみの上映だったのが、評判を呼んで全国の映画館でロングラン上映されたヒット作品でした。

この映画は気になっていたのですが、結局見に行っていなくて、実際のところ、お話の内容もあまりよく知りませんでした。

主人公の日本人女性・サチエがフィンランドのヘルシンキでかもめ食堂という名の食堂を開きます。彼女の食に対する愛情はかなりのもので、その食堂の看板メニューは、彼女が心をこめて握るおにぎり。しかしフィンランド人には、サチエは親に働かされている小さな子どもと思われ、遠巻きに(だんだんと大胆になりますが…)じろじろと見られるだけで、お客さんはほとんどありません。かもめ食堂に足繁く通ってくるのは、日本おたくのフィンランド人青年だけ。そこに訳ありげな日本人女性が2人やって来て、ひょんなことから店を手伝うことになる…というお話です。

登場人物は至って普通の人達なのですが、何故だか滑稽で可笑しい。主人公・サチエがフィンランドで食堂を出すための資金をどうやって捻出したかというくだりも「え゛~、そんなん、ありえないでしょう(-_-;)」と思えるのですが、読んでいるとそれほど突拍子もないことには思えなくて不思議です。ほかの登場人物たちも、どこか日常からかけ離れた雰囲気なのに、それが何故かしっくり馴染んでいる…。不思議な人たちの不思議な世界に、いつの間にか夢中になってしまうのは、群さんの文体のなせる技なのでしょうか。

この本を病院の待ち時間に待合室で読んでいて、「くくくっ」と笑ってしまったりするほど不思議だけれど、とても居心地の良い、まるでサチエの開いたかもめ食堂そのものにいるかのような気分になります。

どこに住んでいても、どこにいてもその人次第なんですよ。その人がどうするかが問題なんです。しゃんとした人は、どんなところでもしゃんとしていて、だめな人はどこに行ってもだめなんですよ。きっとそうなんだと思う。(中略)そうですね。周りのせいじゃなくて、自分のせいなんですよね。”

肩肘張らなくても人生を切り開いていく、普通の人たちのさりげない日常の物語です。淡々と物語は進んでいくけれど、淡々とした日常に幸せがちりばめられている…そんな物語です。

(K.T.)

参照:フリー百科事典「ウィキペディア」
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by terakoya21 | 2009-10-23 14:33 | I Love Books

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