I LOVE BOOKS (てらこや新聞52号 竹川のコーナーより)

BOOK19: 伊集院 静  「駅までの道をおしえて」

以前ご紹介した「機関車先生」…それが、私が初めて読んだ伊集院静さんの作品でした。その「機関車先生」の文体や、読み手に与える印象の良さに惹かれ、もう一冊彼の作品を読んでみようと選んだのが今回ご紹介する短編集です。

8編収められた作品すべてに、「野球」が絡んでくるという設定になっています。

皆さんにとって野球という言葉から連想するものは何でしょうか?高校野球、プロ野球、草野球、はたまた大リーグ。高校野球を思い浮かべるなら、甲子園を目指して汗水流す高校球児を連想しますし、プロ野球なら活躍するプロ野球選手の華やかさを思うのでしょうか。

この短編で扱われる野球も様々ですが、それぞれのお話は、野球そのものを題材にしているわけではありません。というよりむしろ、野球は物語を彩る添え物として登場するのみです。けれど、様々な角度から野球にまつわることが出てきて、野球好きの人にも飽きさせない構成になっているのでは…と思います。

私がこの作品集に収められている作品の多くに感じること…それは、読み進めながら状況を想像し、なぜか非常に爽やかな「風」が行間から感じられるということ、そして「植物」の香りが漂ってくる気がすること、現在・過去・未来の時間の流れをとても豊かに感じられるということです。特に『駅までの道をおしえて』『シカーダの夏』『バラの木』など…。描かれている女性がとても小ざっぱりしていて清々しく、しなやかで芯が強い。ほとんどの作品が「女性」の目線から描かれたものなので、女性には感情移入しやすいかもしれません。人が生きていく中で出会う幸せや悲しみをさりげなく描き出し、綿々と続く時の流れを慈しむように感じさせてくれます。

“君ね、前向きじゃないとつまんなくなるよ。犬だって人間だって同じなんだかんね。”(駅までの道をおしえて)

“二十歳になったのね。木でいえば若木よ。これからどんどん大きくなるわ。何にだってなれる木よ。(略)頬っぺを引っぱたくような強い風だってへっちゃらよ。家を押し流してしまう雨だってへっちゃらよ。こころの根をしっかり張って大地を握りしめていれば、真っ直ぐ伸びていくわ”(シカーダの夏)

伊集院静さんの人生観が凝縮されているのでは…と思える作品集です。

(K.T.)
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by terakoya21 | 2009-08-27 14:46 | I Love Books

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