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上越だより (てらこや新聞51号 下西さんのコーナーより)

「戦争」から学ぶこと 後編

5月21日、上越市河原町(直江津地区)にある平和記念公園に行ってきました。日本海がすぐの、保倉川と関川の河口に挟まれたこの公園は、この日、青空に強い日差しにもかかわらず、海風が吹いて快い初夏の候でした。

平和記念公園には、入り口に「波の旅人像」という名の女の子と貝殻のかわいらしいモニュメントがあります。そして、「東京俘虜(ふりょ)収容所 第4分所跡」の碑を真ん中に、左側に法務死(戦犯容疑で刑死)をとげた8名の慰霊碑があり、「平和の空に8つの星」と刻されています。右側には「オーストラリア兵の死者の慰霊碑」が並んで建っています。そして、その3基の碑の頭上に、「飛天の像」が作られました。また、資料館もあります。これらの公園施設を作る事業は、地元の教師、特に英語教師中心の「直江津捕虜収容所の平和友好記念像を建てる会」によって、進められ、戦後50年の節目の年1995(平成7)年に完成しました。
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この公園は、オーストラリア兵300名が収監され、60名もの死者が出た、直江津捕虜収容所跡地に作られたわけですが、戦後しばらく、「捕虜収容所」という不幸な施設の存在は、人々の記憶から消されていました。タブーでした。なぜなら、「収容所」に働いた地元の人間8名の「法務死」があったからです。
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公園近くに住むホサカさんは、子供の頃、粗末な木造の建物を「お化け屋敷」と称して、外壁の割れ目から中をのぞいたりしていましたが、収容所跡とは知らなかったそうです。(平成の初めまでは一部の建物は残っていた。)大人も過去の出来事については、語れなかったのでしょう。

そんな「不幸なこと」を明らかにし、後世の人に伝えなければならないという機運が起こったのには、二つの要因があります。一つは、戦後20年を過ぎたころから、元捕虜が訪ねてきたり、元捕虜の手紙が直江津に届いたりしたからです。二つ目は、オーストラリアのカウラで、日本人捕虜の大脱走事件(1140名のうち約1000名が死亡)があったことが知られるようになり、そして、そのときの死者(脱走に失敗した兵士)が丁重に埋葬されていることが、明らかになったからです。

昨年夏、カウラの悲劇は「あの夏、僕らの命はトイレットペーパーより軽かった」という長い題名で、日本テレビのドラマになりました(小泉孝太郎、大泉洋 主演)。日本兵捕虜は、カウラで国際法に則った収容所生活を送っていましたが、「戦陣訓―捕虜は恥」の教えからか、自滅にも近い大脱走を敢行しました。ドラマでは、無謀を知りつつ、脱走に与(くみ)せざるを得ない兵士たちの心の葛藤がよく表現されていたと思いました。

平和記念公園ができた年(1995年)から、「建てる会」の会員を母体に、「上越日豪協会」が発足しました。資料館建設を果たし、平和の集い、学校現場での平和教育、そして、オーストラリアの元捕虜やその家族との交流などの活動が続いています。

わたしの友人のオオダケさんは、日豪協会の会員の一人として、1996年にオーストラリアを訪問し、カウラ市にも行ったそうです。カウラ市は、シドニーから西に320㎞ほどの田園都市(人口は1万人にも満たない)ですが、ここに、日本人兵の墓地と、美しい日本庭園が造られていることに感激したそうです。西洋風の墓地は明るい雰囲気で、世界平和の鐘として、日本の梵鐘があったとのこと。国対国の関係が市民レベルの友好的な暖かい交流になっています。

今回の取材で印象に残った言葉に、次の二つがあります。
“We cannot forget, but we will forgive.”(オーストラリアの元捕虜の言葉)
「死者に敵も味方もありません」(収容所で亡くなったオーストラリアの元捕虜と法務死をした所員の、両方の遺骨を供養した覚真寺の住職の言葉)

「飛天の像」(地元出身の岡本銕二作)は、横笛を持った二人の少女が空中に浮かびながら、天上の音楽を奏でているかのようです。一人はユーカリの髪飾り、一人はサクラの髪飾りをつけています。私はこの像に、京都宇治にある平等院阿弥陀堂で見た飛天と同様な、厳かさと華やかさを感じました。
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自宅から車で二時間ほどの長野県上田市に、戦没画学生の絵画や遺品を集めた「無言館」という名の美術館があります。美大生は入営する直前まで寸暇を惜しんで、愛する人をモデルに絵を描いたそうです。竹内浩三が、無念の思いを手帳に書き付けたように。死者は、無言ですが、作品は多くのことを伝えてくれます。「無言館」の中に漂う「痛ましい」感覚、竹内浩三の詩に漂う「虚無感」を、若者に与えてはいけないと、強く思います。

〈参考文献 「上越日豪協会 10年の歩み」「平和をまもる 小中学生用平和教育資料」〉
by terakoya21 | 2009-07-15 16:46 | 上越だより

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