人気ブログランキング | 話題のタグを見る

寺子屋の日々 Days in Terakoya (てらこや新聞50号 亀井先生のコーナーより)

~子どもには、嫌われよう!~

「I wish 友だち親子.」というフレーズが耳に残り・・・私はトヨタの「WISH」という車のコマーシャルが 好きではない。そして、次に 買いたい車ベスト3に入っていたのに・・・今後、私が買いたいと思うことはないだろうと・・・このCMをとても残念に思った。

なぜかと言えば・・・子どもとしての自分自身の経験だけではなく、仕事上の経験を通して、また社会の様子を見ていて・・・「友だち親子」という考え方が私には不可思議で、ときに不快に思えるからだ。

「友だち」ってなんだろう。私にもかけがえのない友人が何人かはいる。しかし、友だちは対等の立場にある存在としてかけがえのない存在であるけれど、その存在意義は、成長とともに変化し、また、必要性も人生のステージとともに変わっていく。そして、彼らは私たちがそうしたいと思えば「とり変える」ことができる存在でもある。

が、・・・親はそうではない。もちろん、子どもの成長とともに、必要性は変わっていくこともあるが、親の存在意義は変わらない。そして、親は子どもたちと同じときを同じ目線で見ている人々ではない。親は、人生を子どもたちより長く生き、子どもたちより多くの経験をしているだけではなく、彼らを育てる義務を負うのだから、彼らが安心して頼れる年長者であるという自覚を持っていなければならないと私は思う。「友だち親」という響きにはそれがない。

友だちというのは、「互いに心を許し合って、対等に交わっている人。一緒に遊んだりしゃべったりする親しい人。友人。朋友。友」であり、対等とは、「相対する双方の間に、優劣、高下などの差のないこと。またそのさま。同等」である。(大辞泉より)

子どもたちが必要とするのは、「友だち」ではなく・・・頼みとなる、いざというときに助けてくれる親ではないか。そして、そんな親が傍にいてくれることが、どんなに彼らの心を強くするか、考えてみてほしい。ときに同じ目線で物事を見てみる必要はある。でもそれは、彼らの心の痛みや苦しみを知るためであり、彼らと同じ立場に身をおくためではないはずである。

私の親は、友だちとは程遠く、厳しい親だった。今でも、ときどき、末っ子が40歳に手が届く範囲に成長したというのに、自分たちの意見は絶対だと主張しているように思える言動がある。兄や姉は、それがなんとも嫌いだったようだけれど、私は一度も嫌いだと思ったことはなく、今、振り返ってその厳しさと自信が、私のためになったとしみじみ感じている。それなりに大人になった私を今ようやく対等まではいかなくても、認めてくれている両親は、ときには心を鬼にして、私を「育てる」ために、いろいろな努力をしてくれたのだと思っている。

私は、親というのは、子どもが若いときには、少々嫌われているくらいの方がいいと思う。そうすれば・・・子どもは自立をしたくなる。親を目標にする子どももいれば、親を反面教師と考える子どももいる。どちらにしても、親は、自分たちより人生の先にいる人々で、子どもの人生の指針である。

一方で、最近多くの親が、子どもに嫌われることを恐れているように思えてならない。それが「友だち親子」を作り出しているように思う。自分の子どもの信じ方がわからずに、優しいのではなく、甘くなっているように思えてならない。子どもは、どんな親であったとしても、心から親を嫌いになることはない。そう信じる強さを親は持っていてほしい。その「信じる心」が子どもたちを健全に育てていくのだと、生徒たちを見て、そして、自分の親を見て私は、確信している。

親に「友だち」であって欲しいと、子どもたちが考えているとは思えない。「友だち」は、いくらでも代わりがいる。

一方で、こんなことを考えている私自身、親ではないし、親にこれからなる確率はかなり低い。「そんな人がえらそうに!」と思う人も多いかもしれないが、だから私は、自らが「子ども」という存在のまま、毎日子どもたちと接する人間として、「親」を考えることができるのだと思っている。そして、私は、生徒たちにとって、気軽にいろいろな話ができ、何かのときに相談できる人間であっても、彼らの痛みや悲しみが分かち合える人であっても、いつも彼らとは違う目線で物事が見える、彼らより広い視野を持つ大人でありたいと思っている。それは、私が彼らの友だちではなく、人生の先輩だからだ。

そして、厳しく、大人の立場で意見したいと思っている。今年度もまた、私の決めゼリフは・・・「あなたたちに、嫌われてナンボの商売。好かれたいと思ってはいない。」になっている。

(Y.K.)
by terakoya21 | 2009-06-05 14:17 | 寺子屋の日々

英語塾の寺子屋かめいの元気を発信します


by terakoya21