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あとがき (てらこや新聞47号 亀井先生のコーナーより)

今回の「寺子屋の日々」でも触れましたが、松阪市では1月末に市長選挙が行われ、2月私より若い市長が誕生しました。我がふるさとがより良き町になるように、新市長には頑張ってほしいと思います。

一方でこの市長選・・・オバマ氏と同じように「change」を謳い、東国原氏のように「松阪を変えなあかん」をキャッチフレーズに当選した新市長・・・なにせ、かなりの保守派を自認する私・・・彼の大勝に恐怖さえ覚えました。もちろん、僅差で勝ってくれていれば・・・何も問題はなかったのですが・・・。

母から聞いた父方の祖母の話の中に・・・私の好きな話があります。この祖母は、私が3歳のときに亡くなり、私の記憶の中の彼女は棺の中でとても安らかに眠るきれいな人で・・・それ以外の思い出はありません。しかし、認知症を患い老人ホームで過ごす前、私が生まれる前後のしばらくの間、次男である父の元・・・つまり我が家で暮らしていたそうです。競輪好きで、父にお小遣いをせびっては「松阪けいりん」に足を運び、ときどき母に「勝ったから」と言ってお小遣いをくれたそうです。母がお小遣いをもらったことを父に報告すると、多くの場合、それは競輪で勝ったのではなく、父から奪ったお小遣いだったようです。

また、母方の祖母は、姉や私が訪問すると毎回のようにお小遣いをくれました。きまって彼女は「私よりあなたたちの方が、このお金を有効に使えるだろうから。大切に使って。」と言っていました。私が、学生時代、海外旅行を含め学費以外に使ったお金の基礎は彼女の懐から出たものを貯めたものです。

私は「お金」の話がしたいのではありません。当時すでに、年金生活だった祖母たちの心の余裕がどこから来ていたのかということを考えてほしいのです。また、その心の余裕が、彼女たちの子どもや孫に与えた心の豊かさを・・・。そして、今80歳に手が届くところまできた父を見て・・・毎日、寺子屋の門番とジョニーのお守りを押しつけられながら・・・自分の身を削っても次の世代に与えることを考えている父を見て・・・最近私は、自分たちのふがいなさを感じずにはいられないのです。

少子化問題の元凶は、私のような30代が結婚することに躊躇し、また夫婦でも子どもを持とうとしないこと・・・そして、それが経済的理由からのように言われることに私は疑問を抱き続けています。少子化対策の大義名分の下、子どもたちやその親が優遇され、その優遇が当たり前だと考える子どもや親が増えている現実をみると、対策が必ずしも社会に還元されていないことに、私は危機感を覚えます。私が「なぜ結婚もせず、子どもも産まないのか」と聞かれたら、答えに「結婚も、出産もしないと決めたわけではない。でも、今、しないのは社会の将来が不安だから。」と言うでしょう。

私の小学生時代、町でよく見かけた高齢者の多くはのんびりとほのぼのとしていました。彼らを見て、私は年をとりたくないと思ったことはありません。ましてや、子どもを産みたくないとも、結婚したくないとも・・・。その時代、医療費がタダだったのは高齢者であり、子どもたちではありませんでした。そして病院に行くと「○○さん、今日はどうしたんやろ。どっか具合が悪いんやろか?」なんていう不可思議な会話が彼らの間でのどかになされていました。その教訓から、彼らの医療費負担が決まり…後期高齢者などという言葉が生まれ・・・彼らの今までの社会貢献をないがしろに扱い・・・介護を十分に受けられなかったり、孤独死をしたりする人がいて・・・。彼らは、貧しい時代の日本をいろいろな形で 支え、権利を叫ぶより義務を果たしてきた人々です。私が知る彼らの多くは、与えられた豊かさをありがたいと感じ、それを次の世代に残そうと考えていた人々です。そして、社会にいくら貢献しても、このような扱いを受けるということを目の当たりにして、次の世代を産み出すことはもちろん、自分たちの生活にも不安を感じるのは私だけでしょうか。何度も言いますが、子どもは社会の鏡です。彼らのおかれた状況は、私たちの社会の状況です。大人の社会環境を改善しなければ、子どもたちも救われないのです。是非、考えてみてほしいと思います。

さて、やはりいつものように最後になりましたが、今回も連載の皆さんに感謝したいと思います。また、旧友、卒業生からのメールも掲載しました。彼女らの言葉に私は涙が出ました。毎月の連載を始め、このようなメールを読むと・・・たまにしか連絡がなくても、会わなくても、一生懸命生活をする心の通った人々がいることに気がつきます。その人々の存在が、私たちがこの仕事を通して、子どもたちへ「未来を託す」力の源です。ありがとうございます。

新しい年が始まってすでに2ヶ月半---「未曾有の経済不況」「派遣切り」「政治不信」などと言う嫌なニュースと身の回りの喧騒の中、家族を省みて、家族のあり方を・・・社会を省みて社会のあり方を考える2ヶ月半となっています。

(Y.K)
by terakoya21 | 2009-03-27 14:00 | あとがき

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