上越だより 最終回(てらこや新聞143-144号 下西さんのコーナーより)

「高田公園の四季」

2月4日(土)高田公園内にある小林古径邸の敷地内にて、「小林古径邸キャンドルナイト」が開かれました。高田城二の丸跡にある古径邸(アトリエ・庭園を含む)に、雪で行灯や灯籠を作って、古径邸に雪の夜の風情を楽しもうという趣向でした。

日本画の巨匠・小林古径(1883~1957)は上越市出身。『新潟の美術』(毎日新聞社)の冒頭に次のように評されています。

……古径芸術における、その独自の厳しい線描、清澄な色調、強靭な造形性、それでいて馥郁と漂う詩情は、まことに近代日本画の一つの頂点……


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古径邸は吉田五十八(1894~1974)の設計、宮大工の岡村仁三が棟梁を務めて施工されたもので、木造二階建て数寄屋造りです。大田区南馬込にあった住宅は、平成5年に解体されましたが、平成7年その部材を上越市が買い取り、平成10年移築・復元され、平成13年完成しました。そして、その価値が認められ、平成17年に国の登録有形文化財に登録されました。

キャンドルナイトは、16時から19時まで開催されました。今年は、小雪でしかも当日は、春のような陽気で、準備が大変(有難迷惑?)だったと思いますが、雪行燈に導かれた経路を辿る庭園は趣深く、普段は見られない風情でした。建物の中に節分のしつらいがあり、季節に合った絵が飾ってありました。もっとも気に入ったのは、雪見障子ごしの雪景色。切り取られた風景は不思議な、深い青の世界で、これぞ雪見障子という体験ができました。薄暮から宵にかけての時間の微妙な推移を感じることができました。来訪者の多くがカメラを片手に珍しい光景を切り取っていました。珍しく晴天になった夜空には、月齢8の半月と金星も見ることができました。

古径邸復元にともなって、従来の上越市立総合博物館内に、「小林古径記念美術館」(平成16年から)が併設されていました。が、今後数年で、この併設状態が解消されます。上越市立総合博物館は改修され 「上越市立歴史博物館」になり(平成30年7月リニューアルオープン)、古径邸敷地内に新たに「小林古径記念美術館」が新設される予定です(平成32年オープン予定)。

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高田公園は、高田城(徳川家康の六男・忠輝の居城)の跡地に作られた約50haの広さの公園です。明治40年に旧陸軍が入城し、一部の堀を埋めるなど作り変えたその形が、現在の公園の土台になっています。

高田公園にはいろいろな施設があり、様々な目的で親しまれています。

城址ですから、お堀や土塁のほかにも、天守閣にかわる建物である「三重櫓」が復元されていて(平成5年)、内部にはお城関係の展示もあります。

子どもたちが遊べる芝生の広場もあり、滑り台・ターザンロープ・ロープネットジャングルジムなどの遊具もあります。

自然科学としての面では、野鳥がすみかにし、お堀では、水鳥・白鳥もやってきますので、探鳥会もできるます。植栽も豊富で、季節の花が楽しめます。

博物館(美術館)や、ブロンズプロムナードがあり、芸術系のニーズにも応えています。高田図書館があり、小川未明文学館も併設されていますから、文学や教育面でもカバーしています。

陸上競技場や野球場・テニスコートもあり、外堀に沿って遊歩道が整備され、スポーツの面でも高田公園の施設は充実しております。

「お城稲荷」「忠霊塔」という祈りの場もあります。

私は、高田公園のすぐ近くに、四半世紀ほども住んでおりました。が、この3月、夫の定年退職を機に、ここを離れることになりました。四季を通じて高田公園を見て、公園でのイベントにも参加してきました。高田公園の四季の、私のお気に入りを紹介しましょう。

春はもちろん桜。公園内には4000本もの桜があるそうで、ライトアップされた夜桜はとみに有名ですが、 昼間の桜もお堀(水)と桜、遠景の雪山と桜の取り合わせは、高田ならではのものです。私のお気に入りの  スポットは、松と桜が混在したお堀沿いの道です。舗装もしていない、自動車も通らない、花見の喧騒も届かない狭い道ですが、野鳥の声を聴きながら緑とピンクのアーチをくぐるとき、春が来たことを実感します。

夏は蓮。お堀が盛り上がるように咲くハスの群生は東洋一といわれています(外堀の19ha)。明治4年から植えられたというハスは当初は食用でしたが、現在はもっぱら観賞用で種類も本数も豊富です。観桜会ほど派手ではありませんが、7月下旬から8月中旬まで開催される「上越はすまつり」は遠方からの愛好家を増やしています。


近年、突然変異の珍しい咲き方のハス「双頭蓮」(一本の茎から花が二つ)「並てい蓮」(一輪のハスの花の中に二つの花托をつける)を見ることができました。

秋は紅葉。公園通りにはイチョウが数本あります。春の芽吹きのころ、薄緑の小さい葉っぱが出てくるのを見るのも楽しみですが、イチョウ色はやはり「をかし!(すばらしい)」。イチョウに交じってカエデが、アクセントカラーを添えます。また、桜の葉っぱの色の変化が、秋の深まりを知らせます。お堀の水面にモミジが映り込むのも「あはれなり(いい感じ)」。

冬は六花、つまり雪。雪は美しいけれど厳しく、冷たいけど懐かしさを運んでくれます。一晩に50cm以上積もると、暮らしに不便というほかありませんが、積雪から守るために施された「雪囲い」は、雪がないと「わろし(風情がそがれます)」。

高田公園は、いろいろなイベント会場にもなります。昨年・一昨年の秋には、クラシックカーのレース、  「ラ・フェスタ・ミッレミリア」の中継地点となりました。通常は車両立ち入り禁止区域にクラシックカーが続々入ってくる光景は壮観でした。堺正章や近藤真彦など有名人も参加していたので、次々登城する車両(多くがオープンカー)に興奮し、「三重櫓」とクラシックカーの取り合わせにミスマッチの極致?をみました。

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現在、高田公園では、今年7月中旬完工、9月から供用開始に向けて、「厚生産業館(仮称)」の建設が進められています。鉄筋コンクリート造り、三階建て(延べ床面積4997㎡)で、中には多目的ホール、公民館、こども施設などが設置されます。

前述の上越市立博物館が「上越市立歴史博物館」になり、時代に応じた系統立てた展示を目指すことになります。そして、その目玉になるのが、謙信愛刀で国宝の「太刀無銘一文字」です。刀の刃文から「山鳥毛」(山鳥の産毛を並べたような模様)という号がつけられています。購入代金3億2000万円に市民の賛否が飛び交っております。

高田公園は、これから数年にかけて施設の改修が 続き、大きく変わろうとしています。



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# by terakoya21 | 2017-05-05 08:30 | 新聞143-144号

BROADアイ (てらこや新聞143-144号 小野さんのコーナーより)

フェイクニュース

今年の流行語になりそうなこの言葉「フェイクニュース」(偽のニュース)。

火をつけたのはアメリカのトランプ大統領です。CNNやニューヨークタイムズなどのメディアはウソばかり流していると批判する時の決まり文句です。自分もウソをついているのに平然としたものです。振り回されるのは新聞読者やテレビ視聴者。もう何を信じていいかわからないですね。

かつてニュースは、新聞社やテレビ局のプロの記者がお伝えするものとして一定の信頼を得ていました。誤りも多いですが誤った場合は訂正します。そのニュースの舞台がインターネットに移りました。多くの人がネットでニュースを見るため、新聞社やテレビ局は自社ニュースをネットにも掲載します。ところがネットは誰もが情報を発信できる場でもあるので、出所不明な情報や間違っていても訂正されることのない有象無象のニュースも出回り、ウソとホントが混在するようになりました。

皮肉なことに、テレビ局自身が情報収集をネットに頼るようにもなりました。もはや現場に行ってカメラに収めたものだけがニュースでなく、一般の人がスマホで撮りネットに掲載したものをテレビ局が許可を得て放送に使うのです。映像が本物かどうかを判断するのが大変です。例えばテロ事件が起きて、あたかもその場にいた人が「爆発の瞬間」として掲載したかのような映像が、じつは関係ない過去の事件の映像だったとか、合成画像だったとかいうこともあります。まんまと騙されるケースも…。

インターネット時代の「ウソかホントか」論争。トランプ大統領はいいところ突いているんです。


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# by terakoya21 | 2017-05-04 08:30 | 新聞143-144号

I LOVE BOOKS! (てらこや新聞143-144号 竹川のコーナーより

BOOK80柏井 壽 「鴨川食堂 おまかせ」
(小学館文庫)

BOOK81近藤史恵「マカロンはマカロン」
(創元クライム・クラブ)

今回ご紹介する本は2冊とも、以前ご紹介したことのある本の続編です。

まず「鴨川食堂 おまかせ」の方から・・・。以前にご紹介したのは「鴨川食堂」という本だったのですが、今回ご紹介する  「おまかせ」の間に、「鴨川食堂 おかわり」と 「鴨川食堂 いつもの」という2冊が刊行されています。どの本も全て同じ展開になっているので、順番に読んでいかなくても楽しめると思います。

京都の東本願寺近くにある、看板もないため一見すると食堂とはわかりづらい鴨川食堂には、いつも人生に迷いを持った人がやってきます。鴨川食堂には板前をする鴨川流と、思い出の食を探すという探偵事務所の所長である流の娘こいしがいます。探してほしいという食はおにぎりや味噌汁、マカロニグラタン、豚の生姜焼きなど、特別な料理ではなく日常よく口にする食ばかり・・・しかも、かなり断片的なキーワードしかなく、見つけ出すのは難しいのでは…と思われるのですが、どれも見事に見つけ出されます。思い出の味とともに 訪れるのは、苦い思いや今は叶わぬ思いなど、懐かしさと切なさが混在します。流の語る言葉がじんわり心にしみる一冊です。

もう一冊「マカロンはマカロン」の方は以前ご紹介した「タルト・タタンの夢」「ヴァン・ショーをあなたに」の続編です。

お話の舞台になるのは商店街にあるビストロ・パ・マルという小さなフレンチレストランです。事件といえるほど大げさなものではないけれど、日常のちょっとした疑問や謎を、ぶっきらぼうな三船シェフが、訪れる客の表情や仕草、会話の端々からヒントを得て謎解きをしていくというお話です。

どちらの作品も、人生のほろ苦さを美味しい料理で包み込むやさしさが味わえます。

( K.T.)



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# by terakoya21 | 2017-05-03 08:30 | 新聞143-144号

寺子屋の日々~Days in Terakoya~(てらこや新聞143-144号 亀井のコーナーより)

~ Before Learning English…

~ 英語を学ぶ前に ~

昨年11月と今年の3月に「作文発表会」に招待していただき、そこで、「英語より前に日本語を」というテーマでミニ講演をさせていただいた。

寺子屋は36日に17周年を迎え、18年目に入ったけれど、私は相変わらず英語への過度の 期待と憧れと闘い続けている。そして、講演の機会に原稿を書き、講演への反応を聞いて気が付いたことがある―。

このままでは本当に英語嫌いが増え続ける。  そして、日本語もまともに操れない子どもたちがたくさんできる。そうしないために…

「英語は、道具である」「英語を学ぶのにはわけがある」ことを、大人はきちんと説明してほしい。

私は、父に「英語は道具だ。英語習得は最終目標ではない」と言われ続け、だから、「英語の先生になるなら、英語以外の言葉を1つ以上学ぶこと、 そして教育学部には行くな」と言われていた。

だから、英語習得は通過点、私の英語学習の目標は英語習得ではなく、アメリカに行き、青い目の金髪のイケメンに出会うことであったり、NBA選手と出会うことであったりというおばかさんの夢から「コミュニティ センターのような塾経営」というちょっと変わった夢まで続いていくことになる。

一方で、英語は、日本語と同じく、世界中に何千とある言語の1つでしかないこと、大人はきちんと認識してほしい。

英語はできたら有利、できなければそれまでであること、きちんと子どもたちに伝えてほしい。

そのうえで、英語を義務教育で教えている理由をゆっくりと子どもたちとともに考え、話し合ってほしい。

私たちにとって、特別な言葉は、日本語だけ。 けれど、英語ができると有利なのはなぜか。それを教えられて学ぶのと、それを知らずにただ、漠然と必要だから言われるままに学ぶのでは、壁にぶつかったときに子どもたちが出せる力が違う。

英語は、もともとどこで話されていた言葉で、今は、どこで、どのように話されているのか、そして、なぜ、義務教育で英語を学ぶことが必要になったのか…。

言葉は、文化とともにあり、その文化をある程度理解しないと「使う」ことはできない。

昨年のサミットのために三重県に足しげく通っていた外交官の友人が、伊勢神宮を各国から来る人びとに伝える言葉を、知恵を出し合って考えているというような話をしていたけれど・・・英語を知っているだけでは、何にでも、どんなときでも英語が自由自在に使えるわけではなく、相手に伝えるべきことを吟味し、言葉を選び、使うことができるためには、幅広い知識と経験が必要である。英語への知識とともに、それがあってこそ、「英語を使うことができる」という―

日本の文化や社会を外国語で伝えることの難しさは、同じように、外国語の文化や社会を私たちが知ることの難しさをも伝えていると思う。そして、外国語を学ぶことは、その文化や社会を知る窓口であることを忘れないでほしいと思う。

Y.K



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# by terakoya21 | 2017-05-02 08:30 | 新聞143-144号

旅日記(てらこや新聞143-144号 海住さんのコーナーより)

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シエナ(イタリア・トスカーナ地方)

イタリア・トスカーナ地方のシエナは、ペルージャのアッシジとは反対方向だがフィレンツェからローカル列車に乗って日帰り旅を楽しめる古くて小さな町だ。ピサの斜塔のあるピサへもついでに足を延ばそう。

アッシジに出掛けた翌日、フィレンツェを朝の8時25分に出て、10時5分に到着する汽車に乗ったことを手帳に記している。シエナはアッシジに負けず劣らず魅力的で、同じくらい有名そうだが、同じではない。もう、アッシジときたら、まるで大和地方の明日香村あたりを歩いているくらい牧歌的で土の香りの乾いた薄茶色い風景の中にモスグリーンのオリーブ畑が点在していて心なごんだ。それと比べ、シエナは「ここは都市国家なんだなあ」とつくづくと思ったものだ。おそらく、シエナのライバルはペルージャ地方のアッシジではなく、同じトスカーナ地方のフィレンツェだったのではないか。政治や経済上の覇権を争った歴史があるのではないか。ここには、フィレンツェのメディチ家と同じような豪商(ブルジョアジー)の存在があったはずだなどと、想像をたくましくしている。

シエナの街の中心は、石畳の街中を駈け抜ける勇壮な競馬見物で世界的なニュースになるカンポ広場だ。広場の周囲には、12~13世紀にフィレンツェと覇権を争うくらい経済力を持った中世都市が、そのまんま、美しい姿でとどまっている。建物も道も明るい色調のシルバーグレーな石で統一され洗練されているところが、造形美として絵にはなった。大聖堂の塔を入れた写真を撮ろうと、何カットもシャッターを切った。

ただ、わたしは、造形美を写真に収める趣味はあまりなく、人間臭さを求めるところがある。野良着で街に人のいるアッシジのオリーブ農家の人たちの素朴な印象を前日に見たばかりで、キレイすぎる街に長居してくつろぐ気にはなれなかった。あまった時間で、ピサの斜塔ぐらい見ておこうと、駅に向かった。


しかし、またしても失敗した!

早めにこの街を切り上げてローカル列車に乗ったのはよいが、動き出してから気づいた。反対方向に向かって走っている。同じ失敗はドイツのデュッセルドルフからケルンに行こうとしてやっている。今回は人と待ち合わせていないのが救いだ。けれど、これではとんでもないところに行っているうちに夕方だな。なぜだかヨーロッパでは、ホームに到着している列車がどっち向いて走っていくのか、なぜか心もとないところがあった。まあ、ヨーロッパ中の主要都市をつないでいる国際列車でないからよいが・・・・。

イタリア・トスカーナの中世都市のシエナは人口5~6万人の街で、トスカーナ地方では十分に“都会”ではあるが、ドイツの大都会デュッセルドルフとはくらべものにはならない。三重県レベルでにたとえると、玉城町のようなシエナから目的地とは反対方向に乗って行けばどんな街に着くことやら?降りた駅から折り返しの汽車が来るまでには2時間はかかる。ひとけもない、駅から見える道路脇に止められたポンコツのクルマには落ち葉が降り積もっている。街歩きして楽しそうなところのない住宅地だ。駅のホームでひたすらぼんやりと過ごした。駅にはだあれもいない。なあんにもない。これはピサへ行ったらもう真っ暗になってしまうと諦め、汽車が来たらまっすぐフィレンツェに帰ろう。


美しくて小さな田舎も魅力的だが、暗い晩秋の夜はさびしかった。

おお、フィレンツェ!

フィレンツェには、美しい造形美も、人々も、“いたぁ~りあん”なざわめきも、それに、小さくて大衆的でおいしい食堂もある。人々の笑い声も聞こえてくる。人のいる場が都市の中に存在する都市。

フィレンツェ万歳!

(1995年11月21日)


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# by terakoya21 | 2017-05-01 08:30 | 新聞143-144号

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