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あとがき (てらこや新聞24号より)

私は、毎日子連れで出勤し、隣の実家に愛息を預けて仕事に向かいます。夜、庭兼職員駐車場から「お疲れ様ぁ~」という私の声を聞き、ジョニーは台所の窓から顔を覗かせ、しっぽを振って私を出迎えます。そのしぐさと彼の示す私への信頼に癒され、帰宅する毎日です。
毎年この時期、私たちは「信頼」という言葉とその持つ意味について考えさせられます。なぜなら、私たちの仕事は、信頼関係なしに成り立たないからです。生徒たちとの信頼関係はもちろんのこと、保護者の方々とも、社会とも良い信頼関係がなければなりません。
しかし、「塾」の存在と社会の「塾」への信頼は不思議なほど不安定なものです。多くの人々が塾に依存し、塾の存在を認めざるを得ないのに、「塾なんか」「塾なんて」と「信頼」されているとは到底思えない評価を受けます。アメリカから帰国して、塾経営の準備を始めた私に、ある地元の名士が「私の娘も語学留学から帰国したが松阪では英語を使う仕事がなく困っている(君もそうだろう)」と気の毒そうに話されたことがあります。私は、「「塾」をするために留学したので「英語」を使う仕事が松阪にあるかないかは知りません。「英語」だけのために大学院留学はしませんよ」と答えたところ驚かれましたが、そこにも「塾」の先生という職業の評価が出ていると思います。父も、私がこの仕事をしたいと言ったとき、大反対をしました。やはり、自分が受けてきたこの評価を娘が受け継ぐことに反対したのです。
それでも、私は、社会で受ける評価より自分のやりがいや夢を追いたかったから、父の反対を押し切って塾を始めました。そして、その現実を思い知りながら7年が過ぎています。
「信頼」というものは、厄介なものです。なぜなら、積み上げるのは難しく、崩すのは非常に簡単だからです。そして、信頼というものは、ときに負担となり、また、裏切られたときの痛みは、相当なもので、それから逃げようとする人も多いようです。心配なのは、そうする人が増えているように思えることです。そして、「信頼」をないがしろにしている人も増えているようです。前者を私は友人や生徒の中に見つけます。そして、やはり自分も裏切られる度、そうなっていくのではないかと不安になります。また、後者は、大人、特にこの時期、問い合わせに来る人々の中に感じます。
本物の信頼関係がどのようなものになるかは、それぞれの関係で違いますが、私たちが塾の経営者、もしくは講師として、信頼を得ることは、私たち自身の日々の努力にかかっています。しかし、「塾なんて」と考えながら、その「塾」に大切な子供を預けている方々と本当の信頼関係を築くことは難しい・・・。そして、それは、親と子供、先生と生徒の信頼関係に影響を及ぼします。
何より、まず子供たちを信じて下さい。彼らの可能性と能力を・・・。環境は少々悪くても、信頼されている子供は、その環境に簡単に馴染むことはありません。そして、彼らの周囲の人々を信じて下さい。-友達も先生も地域の人々も・・・。人は、信頼されるだけで意外な力が出せるのです。そして、身近な人々の信頼から、子供たちの自我が育つのです。
私は、この年度末、年度初めに、自分の父の偉大さを一番感じます。彼の教え子たちの我が父への信頼は、この仕事を始めるまでに私が想像していた以上に、大きいと1年のうちで一番感じる時期だからです。私が、この仕事を始めて7年、父がこの仕事を辞めて16年が経ちますが、彼への信頼がもとで、私たちの塾を選んでくださる方がまだまだ多くみえるのです。そして、その信頼を裏切らないための努力をしなければならないと気持ちを新たにするのがこの時期なのです。
父の教え子の多くが「英語が得意で、成績が良かった」というのではなく、「英語は苦手だったが・・・好きだった。」、「勉強は嫌いだったが・・・塾に来るのが楽しかった」とおっしゃいます。そして、彼らから聞く父の思い出は、「チョークを投げられた」「どつかれた」「怒鳴られた」「余談しか覚えていない」なのです。
父と彼らの間には、「信頼関係」があったのだと思います。怒鳴られても、どつかれても、父は、彼らを見捨てない・・・チョークを投げても、叱っても彼らは父についてきてくれる・・・そんな関係は今も続いているようです。
信頼関係は、どちらかがどちらかを信じることから始まります。それが、いつしか双方通行になり信じ合い続けることで信頼関係が培われていくのでしょう。何事においても「継続は力」です。そんな生徒や保護者の方々との信頼関係を築くために、これからも努力を続けたいと思います。その努力の1つである「てらこや新聞」も、いろいろな方々のご協力を得、今回2年目を終えました。
連載の皆さんを始め、配布のご協力や、励ましをいただく方々、本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。
そして、もちろん、私たちは、塾の先生であることをいつも誇りにしたいと思っています。(Y.K.)
by terakoya21 | 2007-04-09 19:23 | あとがき

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