人気ブログランキング | 話題のタグを見る

上越だより (てらこや新聞119号 下西さんのコーナーより)

*てらこや新聞119号は2015年2月15日に発行されました。

「北陸新幹線開通前夜」

3月14日、北陸新幹線が開通します。長野~金沢間が新設され、従来の長野新幹線が延伸し、北陸新幹線となります。長野県と富山県の間に位置する新潟県では、上越市と糸魚川市が通過地域となり、「上越妙高駅」「糸魚川駅」が新たに新幹線の止まる駅になります。昨年からの上越地域の新幹線準備の模様をレポートします。

上越だより (てらこや新聞119号 下西さんのコーナーより)_c0115560_1047536.jpg


1月25日、上越市大和5丁目にあるJR東日本の信越線「脇野田駅」に行ってきました。信越線脇野田駅と新幹線の新駅予定地が、わずかにずれていたためで、利便性を図るため、脇野田駅は、昨年10月19日従来の場所より西側に120m移転されました。もちろん線路もつけかえて。現在営業中の「脇野田駅」の隣に工事中の新幹線改札口ができます。3月14日からは、ここは「上越妙高駅」と駅名が変わり、上越市の鉄道の玄関口になります。そして、信越線は第3セクター鉄道「えちごトキめき鉄道(トキてつ)」へ移管されますので、「脇野田駅」という駅名は消えることになります。

昨年の12月中旬に降った雪が根雪になり、辺りは1m近い積雪でした。駅の立地場所は、上越市の中心部より南にずれた、妙高市寄りの場所で、田園地帯の真ん中に駅が出現という図です。開業に合わせた街づくりが急務で、周辺の整備が進んでいます。

上越だより (てらこや新聞119号 下西さんのコーナーより)_c0115560_10472942.jpg


駅の構内の東口(もてなしドーム)の天井は八角形のドーム型で、採光のためのガラス張りになっています。壁面は「桜」を意識した配色です。エントランスホールの壁面には、上越市出身で、上越市シティ・イメージ・アドバイザーを務める日本画家・柴田長俊さんの作品が飾られています。ステンドグラスの作品「青海の地」「蒼天の地」で、はなやかさを演出し、冬の夜の樹木を照らす満月を描いた絵画「High Moon・月天心」が、地域の情緒を醸し出していました。エントランスにつながる通路は、上部に横木をわたし、「雁木」をイメージさせるデザインで、通路に置かれた丸いポストは、上越市出身の近代郵便の父・前島密を顕彰したものです。

私が住む上越市高田地区から、東京に、鉄道を使って行くには、主に2つのルートがあります。信越線高田駅から信越線下りに乗って直江津駅下車、直江津駅から特急「はくたか」(北陸線から北鉄急行経由)乗車、越後湯沢駅にて「上越新幹線」に乗車するルート(約2時間15分)と、もう一つは、高田駅から信越線上りで長野駅まで行き「長野新幹線」に乗車するルートです。前者は、北陸新幹線になっても時間の短縮はわずかですが、乗り換えの面倒がありませんし、乗り換えの待ち時間もありません。後者は、乗り換えが一回ですが、それ以上に時間的な問題が大きいのです。

高田駅~長野駅は現在きわめて不便です。時間はかかるは、本数は少ないは…。以前、松阪から名古屋経由で、真冬の上越に戻るとき、特急「しなの」で長野まで無事着いたものの、黒姫駅で、大雪のため運転を打ち切りにされたことがありました。信越国境は積雪の多いところですが、夜間に運行停止になるとは。この日は幸いなことに、列車内に知人がいて、迎えの車に便乗させてもらいました。信越線で1時間23分かかっていた長野までの所要時間(長野駅~高田駅)が、なんと19分(長野駅~上越妙高駅)になります。

駅名を決めるのも、紆余曲折がありました。「上越市」という地名は「上・越後」から発しています。JR線の「上越線」「上越新幹線」の「上州と越後をむすぶ」意味の「上越」との混同を招きかねないということで、地元では新幹線の駅名に「上越」を入れることに強い抵抗感がありました。しかし、「高田市」と「直江津市」が合併して名付けられた「上越市」も、40年以上の歴史を刻んでしまっているので、協議の末「上越妙高駅」に決定されました。もし「上越新幹線」が「新潟新幹線」と名づけられていたなら、上越市と上越新幹線との混同もなかったでしょう。いくつかのボタンの掛け違いの感が否めません。

上越だより (てらこや新聞119号 下西さんのコーナーより)_c0115560_1047548.jpg


北陸新幹線は、東京~金沢間を「かがやき」号(速達タイプ)では、2時間32分で走ります。しかし、この「かがやき」号は、「上越妙高駅」には止まりません。各駅停車タイプの「はくたか」号しか止まりません。速達型は長野から新潟の地をすっ飛ばして、富山駅へ。JR東日本が発表した時刻表に、上越市民の怒りと失望感は大きいものでした。

北陸新幹線の新潟県の停車駅は「上越妙高駅」と「糸魚川駅」です。それぞれの駅の発車メロディーは「夏は来ぬ」と「春よ来い」です。「夏は来ぬ」は上越市出身の小山作之助の作曲であり、「春よ来い」は糸魚川市出身の相馬御風の作詞です。

新幹線開通を機に、地域を活性化させる試みが始まっております。その一つが、「ようこそ。越五の国へ。」というキャッチフレーズで、上越市はもちろんですが、妙高市・柏崎市・十日町市・佐渡市(5市)に及ぶ広域の産業振興の目論見です。新幹線によって、多くの人がこの地を訪れ、自然を愛で、グルメを楽しみ、温泉で癒され、歴史や人情にひたる体験をしてほしいと思うとともに、上越の人々にも希望がもたらせることを願っています。

上越だより (てらこや新聞119号 下西さんのコーナーより)_c0115560_10481928.jpg


上越妙高駅では、「越五“夢サクラ”プロジェクト」という楽しい企画が進行中です。世界中の貴重植物を探し採集する「プラントハンター」西畠清順さん(TBS系の番組「情熱大陸」でその存在を知った)の指導の下、5市で集められた桜の枝を開花調整して、当日、アイボリーホワイトに空色と銅色に塗り分けられたE7系(W7系?)の新幹線を、満開の桜で歓迎しようという試みです。≪註:東京~上越妙高はJR東日本、上越妙高~金沢はJR西日本、車体が、E(east)なのかW(west)なのか、報道では両方使われている。≫
ここ数年にわたって、新幹線の建設工事を眺めていたものとしては、「やっとできたのだ!」という感慨がひとしおです。北陸新幹線開通は悲願といえばまさにその通りです。

「大」を通せば「小」の犠牲が生まれるのは世の常ですが、「新」「旧」が共栄することを願っています。
by terakoya21 | 2015-03-24 10:50 | 上越だより

英語塾の寺子屋かめいの元気を発信します


by terakoya21