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寺子屋の日々 ~Days in Terakoya~ (てらこや新聞110号 亀井のコーナーより)

… Haste Makes Waste… …
~ 急いてはことを仕損じる ~


「授業への要望」を聞くと、よく「『リスニング』を授業でもしてほしい」という意見が届く。けれど、その要望に私たちは、目に見えて…というか、期待される形では対応をしていないと感じている生徒がいると思う。この意見では、『リスニング』『ヒアリング』という聞き取りの力をはかる部分が定期テストにはあり、そのための「対策」なるものを求められているのだということは重々承知だけれど…『リスニング』のためだけにできる対策などないのだから、私たちは「音読」に力を入れることでその対応を前々からしてきている。

『聞き取る力』は、音声を聞くということだけを繰り返せば身に着くものではない。もちろん、それは英語の音と音波に慣れるという効果はある。けれど、それは、英語を理解させる効果は少ない。

『聞き取りで理解する』基礎は「黙読」と「音読」から作られる。そして、単語を覚え、文法を覚える努力が加われば、それなりの「聞き取る力」は自然についていくのである。そこで、日頃の教科書の授業ではなるべく音読をするようにしているので… CDなどを使ったリスニングの授業は、受験対策などではするけれど、日頃の授業でそれをしてほしいというのなら…その前に生徒たちにしてほしいと思うことがいくつかある。

文法の授業で…「“That picture is beautiful.” を疑問文にしなさい。」という問題があったとしよう。私は、授業で…“That picture is beautiful.”を読み上げ、「これを疑問文にすると?」と尋ねる…。答えは、”Is that picture beautiful?” で、答えに使われる単語は、問題文に使われているものとそっくり同じである。その文章が正しく自分の問題集やノートに書かれているというに…自分の答えを発音できないという生徒が多くいる(もちろん、例として用いているので実際にはもう少し難しい単語のときである)。これは、どうしてだろう。考えられるのは、①私の発音があまりに下手(上手?)すぎて、聞き取れなかった、②私の発音を聞いていなかった、のどちらかだと思う。私の発音は、取り立てて下手でも上手でもないと思う。そして、もし、注意深く聞いていたとして、聞き取れなかったのであれば、「もう一度、この単語の発音をしてください」と聞いてくれれば、私は、もちろん快く発音するだろう。…③として、もしかすると自分が当たるということに 非常に緊張して私が発音しているときに聞き取ることができなかったというのもあるのかもしれないが…その場合…「緊張する」ことに対処しなければ、テストなどで実力を出すことはできないのだから、徐々に慣れる努力をしてほしいと思う。

また、「英語」は言葉である。日本語でできないことは、英語でもできないのだと思う。

そして、日本語でそれができれば、英語でもそれなりにできるようになる。

友だちと話すとき使う言葉と大人と話すときに使う言葉を変えることができない生徒が増えている。そして、漢字を使い分けることのできない生徒が増えている。それは…英語を学ぶ上でも大きな支障を来す。

日本人は、仮名と漢字を使い分ける―他の国の人々よりもその点で言語能力の高い人たちだ。そして、日常的に、聞き取った「ことば」を頭の中で漢字に変換し、語と文章を認識し、理解するというプロセスを気付かない間に行っている。―だから、単語を知らない、漢字がわからないでは、日本語をうまく聞き取り、理解することはできない。英語でも同じことだ。英単語を耳にしたとき、それをスペリングして、認識し、理解する。単語を知らなければ、理解できない。そして、相手の置かれている状況を理解していないと誤解が生じる。逆に言えば、うまく聞き取れなくても、単語を知っていたり、状況を認識していたりすれば、理解できることになる。

それが、言語である。

子どもたちの「勉強」に、ひと手間、ひと努力、ひと工夫が足りないと感じることが多い。そして、そのひと手間、ひと努力、ひと工夫を積み重ねていけば、必ずや実力は上がるのに…と思える生徒が何人もいる。

それは…「効率」を重んじる社会の傾向や…一見簡単に、また易しく見えるものに飛びつく、そして「傾向と対策」なるものが全てにできると思っている大人が増えているからだと私には思える。勉強は本来「めんどうなもの」であり、学習を繰り返し、少しずつ、徐々に知識や能力が身についていくものであることを忘れている人が多いからだろう。

“There is no royal road to learning. (学問に王道なし)”だということをもう一度、繰り返しておきたい。

そして、“Haste makes waste. (急いてはことを仕損じる)” 効率よりも積み重ねが学習には必要であること、傾向と対策も、地道な努力に勝るものではないということを強調しておこう。

(Y.K)
by terakoya21 | 2014-05-30 17:07 | 寺子屋の日々

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