不思議な宣長さん (てらこや新聞106号 吉田館長のコーナーより)
2014年 01月 29日
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らん いくと、どうなるのですか?
和歌子 『源氏物語』の世界が開けてくるの。
らん 『源氏物語』の舞台が京都だというのは分かりますが、和歌も関係あるのですか。和歌って短歌ですよね。知り合いのおばさんが短歌で入選したとか騒いでいるけど、『源氏物語』はもちろん、本とは無縁の生活をおくってますよ。
和歌子 そこが、和歌と短歌の違いの一つでもあるんだけど・・・和歌はたとえば奈良時代や平安時代までは、貴族社会ではコミュニケーションの手段だったの。
らん コミュニケーションって、会話ですか。
和歌子 そう。特に人と人が想いを伝えたり、心を通い合わす時に歌が詠まれたのよ。
らん 貴族だけですよね。
和歌子 平安時代になると特権階級の専有物になるけど、それ以前は身分に関係なく歌われていたのよ。
らん お姫様とか貴公子だけじゃないんですか。たとえば漁師やお百姓さんに歌が詠めるんですか
和歌子 『万葉集』にはあらゆる身分の人の歌が入っていますよ。歌というのは、言葉を知っている人なら誰でも口ずさむものよ。また仕事するときに調子を合わせたりするために、自然に発生するのよ。
らん でも五七五七七じゃないですよ。
和歌子 ところがね、口ずさむときに、あるいは調子よく歌うときには、自然と節が付いてくるものなの。たとえば何かの標語でも口調がいいのは七五調が多いのよ。
「飛び出すな、車は急に、止まれない」
らん へえー
和歌子 そのことをはっきりと言ったのが、実は宣長さんなのよ。歌は、人々の生活から自然発生的に生まれてきて洗練されていったの。その中でも、王朝貴族社会に入っていったものは和歌になり、民衆の中で育っていったら民謡や労働歌、三味線歌やちょんがれ、そして現在の演歌やフォーク ソングになるのよ。
らん ちょんがれ?宣長さんはそんなことも考えていたんだ。
和歌子 和歌の本質や変遷を考えているの。その一番最初が部屋の中の二年間半という時間なのよ。
らん ところで、『源氏物語』と和歌の関係ですけど・・・
和歌子 和歌が生活の中で息づいていた宮廷社会を舞台とした『源氏物語』は、各シーンは、たくさんの歌で物語が展開し、また彩られます。この物語に歌は全部で何首出てくると思いますか。
らん 見当も付きません。
和歌子 795首です。
らん 多いですね。
和歌子 たとえば『古今集』が1111首だから、ちょっとした歌集くらいありますね。しかも歌の誕生する場面が描かれているから、この物語は和歌の本でもあるし、実際に歌人の必読書とも言われていたのですよ。その扉が開かれたのが、17歳から19歳までの時期だったのです。今日は長くなったのでこのあたりにしますが、次回はもう少し具体的に17歳からの一人でのもの 学びについてもお話ししますね。
らん それと和歌と短歌の違いや、歌についてももっと教えてください。
和歌子 あわてないで。順を追って説明しますね。