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Point of View (てらこや新聞94号 寄稿コーナー (松本さん)  より)

不登校

私の勤める中学校である出来事がありました。中一の男の子が人間関係が うまくいかなくなって学校を休み始めたのです。彼が関係に悩んでいた相手は、とても我がままな男の子です。一見愛想が良い子ですが、努力が嫌いで授業中は私語が多く、課題や宿題も全て自己努力で成し遂げることができません。提出物も不備が多く再提出になりますが、出さないばかりか教師に「俺、出したよな?」などと機嫌を取りながら努力をしているというアピールをします。そして友達に授業中に消しゴムや鉛筆などを立ち歩いては借りに行き、また数十分後に立ち歩いて返しに行ったりします。注意をすると「返しに行っただけ。立ち歩いていない」などと言い訳をします。このような彼の素行の悪さについていけなくなったのと、彼の問題行動にいちいち巻き込まれるのが嫌になったのでしょう。2学期の最後の10日間は学校に来なくなりました。

彼は5教科全て良い点数で、悪い教科でも85点は取れています。私が教えている英語は一番好きな教科です。92点ありました。勉強も部活も真面目に頑張ってきたのですが、心は悲鳴を上げていました。そのことに私を含めて周りの大人が気付いてあげることができませんでした。いや、気付いていたけれども見過ごしていました。迷惑そうにしている姿を見ていましたが、素行の悪い子へ自覚させるまで指導をすることができませんでした。彼の悩みについて考えていた時、これは誰にでも起こり得ることだと思いました。

と同時に、学校へ行きたくても行けない辛さを思うと私も悲しくなりました。実は私の息子も人間関係で悩みながら毎日学校へ行っています。「お母さんが、学校へ行かなくてもいいよと言ってくれさえすれば学校はやめる」と毎日のようにつぶやきながら登校しています。

私は親として悩みながら彼を送り出しているのです。

学校がストレスや悩みの原因となり、帰宅後疲れ果てて何もできなくなることもあります。「そこまで辛い思いをして学校は行かなくてはいけないのだろうか」と思います。

まだその答えは見つかっていません。でも、続けていく中で彼の心が育ち、大人を信頼したり人間関係を築くことを学んでいけたらと淡い期待を持っています。

人間関係のトラブルを起こす子は往々にしてわがままな子が多いです。自分の意見が通らない 相手を攻撃します。面と向かって攻撃することもあれば、ブログにその相手の悪口を書いたり、友人にメールで文句を言ったりすることもあります。我慢することに慣れていない上に誰かに泣き付けばすぐに助けてもらえる環境にあることが多いです。

おまけに今は小学校でも手のかかる子が増えているのもあり、小グループの活動が多く、クラス全体を考えるという訓練がされていません。ですから自分の言動がクラスにどのような影響を及ぼすかなどと考えられない子が多いのです。

ですから、授業中も教師が話し始めると同時に質問が口々に飛び交い、教師の声がかき消されることがよくあります。その時に「静かに聞いている子の迷惑になる。」と諭すと、彼らはとても驚きます。私は保育園でも1年間働いたことがありますが、年少や年年少(2歳児クラス)の集団保育に近い状況だと思います。違うことは、体が  大きく、自制心のある子の割合が多いことです。一部の子は2歳児から心のどこかが育っていないのではないかと思うこともあります。

それでも彼らの可能性を信じて、忍耐強く何度も何度もチャンスを与えながら成長を待ち続けています。その気持ちを言葉で伝えると、9割以上は「勉強しないよ」「期待しないでください」「先生が試験の答えを教えてくれれば全て解決します」「英語の授業を時間割から消したらいい」「採点の時に100点にしておいてよ」「先生の話は聞いていますよ」「めっちゃ調子いいので任せてください」などと言うか、更に何か言われないために返事だけします。

このような子たちは手がかかります。学習指導以前に生活指導をしなければいけません。朝から下校まで目を光らせていなければ問題を起こす子もいます。ですから教師に言いたいことがあっても性格的に言えない子や、おとなしい子の問題が後回しになってしまいます。クラスに数人はこのような子がいますが、ひどいクラスはこのような子が10人近くいます。クラスの約四分の一の 割合です。

こういう状況ですから、学校へ行きたくなくなった男子生徒の気持ちが痛いほどわかり、涙が出ました。

人間関係で悩んでいる子がいたら言いたいことがあります。「あなたたちはダイヤモンドの原石です。今は辛いかもしれないけれど、焦らずゆっくり自分に合う友だちが見つかるまで人を見る目を養ってください。そして、自分が持っている才能や得意なことを見つけてください。勉強や運動、芸術、何でもいいから自分が自信を持って誇れるまで磨き続けてください。その分野で自分の時代を築く日が来るまで努力することを忘れないでください。人生は理不尽なことがたくさん起こります。でもその中から救ってくれる人が必ずいます。その人を見つけたら、感謝して自分のできることを一生懸命にしてください。努力をする力が湧いてこない時は、休んでください。あなたに価値があり、愛されるべき存在であることを心に刻んで欲しいです。」

学校は過酷な場所ではありますが、素晴らしいことも起こります。

上記の男子生徒とは別のクラスでは、他校でひどいいじめにあった女子 生徒が越境して転校してきました。クラスには数週間で馴染みました。徐々に笑顔が見られるようになってきて、遅れ気味の勉強もお母さんに助けてもらって一生懸命取り組んでいます。

嫌なことを起こすのも人ですが、良いことを起こすのも人です。嫌な面ばかり見ると気が滅入りますが、良い面を見続けると楽しくなるものです。 教師を続けていくことができる理由はここにあるような気がします。

この中一の男子は担任の家庭訪問を重ね、塾の先生に助けられ、親に支えられながら冬休みを迎えました。そして冬休み中の部活に顧問が迎えに行ったときに、一緒に登校することができました。何度かお母さまからメールをいただいている中で、学校へ行けた日は嬉しくて涙が出ました。3学期、彼とまた一緒に勉強ができると思うと、とても嬉しくなりました。また学校へ行けない日があるかもしれませんが、少しずつ自分の居場所を見つけて楽しく学校へ行けるようになってくれればいいと思います。

(N.M)
by terakoya21 | 2013-02-10 09:45 | その他の記事

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