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不思議な宣長さん (てらこや新聞94号 吉田館長のコーナーより)

第十九話  いつも若い?

らん おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

和歌子 お正月はいいものでしょ。

らん すべてが新しくなる気持ちですね。

和歌子 いろんな民族でよく似た考えがあるけど、日本には、お正月は若返る時期だと信じていました。

らん 和歌子さんのお名前みたいですね。リセットするんですね。

和歌子 そう、まさにリセットよ。昔はお正月の早朝に井戸から汲む水を「若水」と 言いました。

らん その水を飲むと若返る?

和歌子 その通り!

らん そんなこと信じてたんだ。

和歌子 「を(お)ち水」とも言って月の神様が持っていたのよ。 『万葉集』にも出てくるのよ。

らん わかった。お月さんは消えてもまた出てくるからだ!

和歌子 そうね。ニコライ・ネフスキーには『月と不死』と言う本もありますが、宣長さんも『玉勝間』で、「をち」はもとに返ることだと書いています。「をち」は若々しくて元気がいいと言うニュアンスもあるのよ。

らん 「越智」さんという先生もお見えですが・・・

和歌子 とてもよい名字ですね。「亀井」さんも、その水を飲むと若返る不思議な井戸を持っていたのかな。

らん 昔話の中に、不思議な泉ですが、その水を飲み過ぎて赤ちゃんになった、いじわるなおばあさんがいました。

和歌子 「をち」と「をと」とは言語学的には同根、つまり、もとは同じ言葉だとされています。

らん そうなんですか?「おと」って男って言う意味じゃないんですか。

和歌子 それでは「おとめ」は説明できないでしょ。「男(おとこ・をとこ)」も、「少女(おとめ・をとめ)」も、若い力を持っている「子」、「女(め)」と言う意味なんです。

らん 意味があるんですね。若くなければ男ではない!

和歌子 ところで今年は出雲大社も伊勢の神宮も遷宮です。

らん お詣りしましたが、そんなに古くなってないようですが、なぜ新しくするのですか。

和歌子 神道には「常若(とこわか)」という考えがあります。字の通り、常に若いことです。若返ることです。「常若」は、言葉としてはそんなにさかのぼれないのだけど、神道の根底には古代からこの考え方が流れています。だから、一定年度で造り替えるのです。

らん ぜいたくですね。

和歌子 神道は「清浄」ということもきびしく守ります。

らん 常にきれいでなきゃいけない。たしかにどこの神社もシンプルで、なにか清々しいですね。

和歌子出雲大社は60年だけど、伊勢は20年に一度で、ちょうど技術の伝承にもなるしね。ところで、宣長さんは神宮に関心を持って詳しく調べています。なぜかわかる?

らん 神様が居るからでしょ。

和歌子 20年に一度という制度を式年遷宮と言います。このことが決められたのは685年天武天皇の時でした。

らん 天武天皇と言えば・・ 『古事記』だ。

和歌子 その通り。『古事記』を作ろうと考えた方です。その天皇の時から原則として20年に一度、前と同じように造り替えているわけだから、わかるはね。

らん 天武天皇のときのまま、ですか。タイムカプセルみたいだ。

和歌子 神宮は古代の世界を今に伝えているのです。宣長にとって本を読むとは、その情景を頭の中でヴィジュアルに再現することだって前にお話ししたかしら。『古事記』でも同じです。
本当に600年代のままかどうかとか、『古事記』はさらに古い世界を描いているとかはあるけど、でも『古事記』世界を思い描くときに、神宮が一番参考になると言うことは間違いがないのよ。

らん ところで、今年のテーマは何ですか?遷宮とか伊勢ですか。

和歌子 今年は、250年がキーワードです。

らん ?

和歌子 賀茂真淵と本居宣長が出会った「松阪の一夜」も、本居宣長の長男・春庭さんが生まれたのも、有名な「もののあはれ」説が出来たのも全部1763年、つまり250年前のことなのよ。

らん 「松阪の一夜」はわかるけど、春庭さんって有名な人ですか。「もののあはれ」って何ですか。

和歌子 次回から、少しずつお話ししましょうね。伊勢や遷宮とも関係が出てくるはずです。
by terakoya21 | 2013-01-31 10:02 | 不思議な宣長さん

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