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On the Sideline (てらこや新聞89-90合併特大号 かめいのコーナーより)

~ あれから11年 ~

また9月がやってきました。9月は、いろいろな意味で大切な月ですが、11年前の9月は、私の人生観を大きく変えました。

9・11-今年の11年目の記念日…日本の報道のあまりの小ささに愕然としながらも、生徒たちに「今日は何の日?」と聞くと…高校3年生諸君は、一応…「アメリカ同時多発テロのあった日」と答えてくれました(ただ、ツインタワーに2機飛行機が突っ込んだだけで、『同時多発』だと思っていたらしいけれど…)。

そこで、その前から9・11について何かを書く気でいたので、報道の小ささに思いたち、発売当時に購入し、つらくて、全部見られなかったDVDを見きり、紹介することにしました。

「11’09”01 SEPTEMBER 11」

監督:ショーン・ペン(アメリカ)・ケン・ローチ(イギリス)・今村昌平(日本)・ダニス・タノヴィッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)・アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(メキシコ)・クロード・ルルーシュ(フランス)・アモス・ギダイ(イスラエル)・サミラ・マフマルバフ(イラン)・ミラ・ナイール(インド)・ユーセフ・シャヒーン(エジプト)・イドリッサ・ウエドラオゴ(ブルキナファソ)(2002年 フランス)

11ヶ国、11人の映画監督が製作した9月11日の事件に対する自分たちのメッセージを込めた【11分9秒1フレーム】の映画集です。

どの短編映画も考えさせられるもので、必ず、その中のセリフや映像が心に残ります。

最初のイラン人監督サミラ・マフマルバフの作品では、無邪気な子どもたちの表情と子どもたちが見上げる煙突から出る煙、※ブルキナファソ人監督の作品の中の子どもたちの表情…

ショーン・ペンによる作品の老人の住む暗い家が、WTC(ワールド・トレード・センター)ビルの崩壊により明るくなるシーン…花が咲くことを喜ぶ老人も、その光により妻の死をようやく実感する…。

インド人監督ミラ・ナイールの作品では、アメリカ在住のイスラム教徒のパキスタン人で、たまたまそこにいたから、救助に駆けつけ犠牲になったのに、WTCにいる予定ではなかった人で、イスラム教徒だというだけで、テロリストの仲間ではないかと実名で報じられ、その後、救助に駆け付け、亡くなったことがわかるとヒーローとして扱われた青年の実話をもとに、葬儀で母親が語ったスピーチを取り上げています。

「もし、当たり前のように人を助ける優しい子に育てなければ、この子はまだ生きていたかもしれない」―私の育て方が間違っていたのか…。

―テロリスト扱いされたと思ったら、次はヒーロー扱いという世の中のあり方に疑問を呈し、また、それでも、愛する人を失った人々は―特に親は―自分に何の非がなくても、自分を責めていく―親の心を思い知る場面です。

そして、メキシコ人監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥは、真っ黒な映像の合間に、ビルから落ちる人々の映像を入れ…最後に光の映像とともに、私たちに問いかけます。

― Does God’s light guide us or blind us?―
― 「神の光は私たちを導くのか、それとも目をくらませるのか。」―

今年の9月11日は、同時多発テロの11年目の記念日(2001/9/11)であるとともに、多くの犠牲者を出した、チリのクーデター(1973/9/11)から39年目の記念日でした。そして、東日本大震災(2011/3/11)から1年半、またボスニア・ヘルツェゴビナのスレブレニツァの虐殺(1995/7/11)から17年と2か月です。

「物事」にはいろいろな視点があり、世界中の国々にいろいろな事情がある―世界的に唯一無二の善悪の基準や正誤の判断があるわけではなく―それでも、人の命が、失われ、愛する者たちが苦しむということには、皆心を痛め、そこから何かを学ぼうとしている―という共通点がある。…また、この事件は、世界を大きく変えてしまったということは間違いない。

「毎日、人は何かを喪失し、それには哀しみが伴う。どのように今日という一日を平和に過ごすのか、どうすればよりよい明日が訪れると信じることができるのか、それが常に問題なのである。」(ショーン・ペン)

起こったことやこれから起こることを憂い、哀しみながらも、そんな希望と勇気が持てる一枚です。よろしければ、皆さんもご覧下さい。

最後に―イギリスのケン・ローチ監督による作品の中に、あった言葉を紹介します。

―“Hope has two beautiful daughters. Their names are anger and courage; anger at the way things are, and courage to see that they do not remain the way they are.” (by St. Augustine)

―希望には、2人の美しい娘がいる。彼女らの名前は「怒り」と「勇気」:現状に対する怒りと、その現状がいつまでもそのままはないと気が付く勇気 (聖アウグスティヌス)(訳:亀井 好絵)

私は、その美しい娘たちをいつも心に持っていたいと思っています。

(Y.K)
※ ブルキナファソ:西アフリカにある共和国

注:てらこや新聞89-90合併特大号は…2012年9月15日に発行されたものです。
by terakoya21 | 2012-10-11 07:00 | Sideline

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