不思議な宣長さん (てらこや新聞89-90合併特大号 吉田館長のコーナーより)

第十六話 全ての道は『古事記』に通じる

らん すっごく基本的なことですが、宣長さんは国学者だと言われていますが、「国学」ってなんですか。

和歌子 日本の古典を材料にして研究する学問です。

らん えっ、「日本の古典」を研究する学問ではないのですか。

和歌子 研究の目的は、日本人の心とか世界観や価値観を知ることなのよ。その方法として、「ことば」や『古事記』、『万葉集』、『源氏物語』などの古典も研究します

らん ことばや古典は材料ですか。

和歌子 そう考えても良いでしょうね。

らん 古典研究が目的だと思ってました。

和歌子宣長の最初の疑問は、日本の人はどうして歌を詠むのだろう。どうして『源氏物語』が好きなんだろうでした。

らん いくつくらいの時ですか。

和歌子 京都で勉強していた頃から、松阪でお医者さんを始めた位だから20代の終わりかな。

らん その謎は解けたのですか。

和歌子 一応ね。らんさんは、わかりますか?

らん 「もののあはれを知る」心があるから、ですか。

和歌子 そうですね。そのような「もののあはれを知る」心だとか、日本人の考える「神さま」とか、つまり、日本人特有の「物の考え方」を探求するのが、「国学」の目的です。宣長は、「言葉」と「心」と、「事柄」は一致すると言います。言葉を知ると、心や、また出来事までわかるのだというのです。だから一生懸命、日本語についても研究したのよ。

らん 言葉についても調べたのですか。

和歌子 五十音図の「お」と「を」を入れ替えて今の形にしたのも、「係り結び」という言葉の法則があることを発見したのも宣長の業績よ。知らなかったの?

らん ・・・

和歌子 だから、和歌や『源氏物語』を研究して、その本質が「もののあはれを知る」にあることがわかった。でもそれは最初から日本人が持っていた考え方なのかなと疑問に思って、さらに古くまでさかのぼっていったら、現存最古の歴史書『古事記』に到達したのです。しかも驚くことに、そこには昔の声(語り)が記録されていたのです。それも漢字ばかりで・・・

らん 漢字ばかりで「声」が記録されるというのも不思議ですね。ひらがなやカタカナは使わずに・・・

和歌子 ひらがなやカタカナは、それから100年近くも後から発明された文字だから、漢字しかなかったのね。『古事記』を読むことは、天武天皇が稗田阿礼を前にして語った言葉を聴くことだと宣長は考えました。だからその「語り」を再生することが、『古事記』研究の目的だったのです。

らん 声を聴くことで心がわかる、からですか。

和歌子 契沖の段階では『万葉集』を読むことが目的だったけど、同じ本を研究しても賀茂真淵になると、その先、つまり『古事記』が視野に入ってきて、その弟子の宣長では目的が明確になったのよ。

らん 和歌や『源氏物語』の研究も、『古事記』研究もみんな関係があるのですね。

和歌子 『うひ山ぶみ』という本には、今お話ししたようなことが書かれていますよ。今日の話はとても大切なことなので、また繰り返しお話ししますね。
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by terakoya21 | 2012-10-04 13:49 | 不思議な宣長さん

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