不思議な宣長さん (てらこや新聞80号 吉田館長のコーナーより)

 第九話 宣長さんの魅力ってなんですか

らん 先生は、宣長さんのどこに魅力を感じますか。

和歌子 一言で言うのは難しいけど、全部に細やかな配慮がなされているところですね。

らん 服とか持ち物とかですか?

和歌子 らんさんが思うようなのとは少し違うかもしれないけれど、でも基本は同じね。
たとえば映画に出てくるような学者のイメージって、ちょっと危ない系じゃないですか。

らん いかにも研究だけという感じですね。髪の毛はくしゃくしゃで、汚い服を着てる。

和歌子 宣長さんはおしゃれだ、と言った人がいます。着物や身だしなみ、また本を出版するときの表紙だとか、全部自分のこだわりがあるのです。

らん 趣味人ですね。

和歌子 でもそれだけじゃないの。生まれたときから死ぬまで、音楽で言う「通奏低音」というのでしょうか、ずっと流れ続けている音のようなものがあるのです。

らん よくわかんないなあ。

和歌子 本居宣長記念館の展示やカタログで見て欲しいのだけど、いかにも宣長さん、という特色が何にでも有るの。そんな人って居るでしょ。

らん 私の知り合いの方も、住んでる家とか車とか無造作に選ばない人がいます。

和歌子 それが徹底している所ですが、ちょっと話が大きくなりました。11月5日は、宣長さんの210回目の命日でした。

らん 死んだ日ですね。もう210年もたつのですね。

和歌子 そうです。その次の日、千葉県からいらっしゃった方が、ぜひ奥墓に行きたいとおっしゃるので、雨も上がったので、ご案内しました。晩秋、雨上がりの山室山は木々の色も濃くてとてもきれいでした。

らん 山道は滑りやすいですね。

和歌子 その時、感じたのですが、お墓もシンプルでうつくしいけれど、周りの風情がすばらしいの。

らん 私が行ったときも、大きな木が生えていて、頂上から海も見えました。

和歌子 松阪の町から車だと20分位しか離れていないのに、深山幽谷といった風情でしょ。

らん シンザンユウコクってなんですか。

和歌子 山が深くて谷が静か、つまり山奥、ちょっとした秘境ですね。

らん 木霊(こだま)とか、つちのこだとか出てきそうですね。山寺もあるし。しかも雨上がり。

和歌子 私は泉鏡花の『高野聖』の冒頭を思い出しますが、その時、町の近くで、よくこんな場所探したなあって感心しました。

らん そういえば勉強部屋の「鈴屋」だってシンプルだけどいかにも宣長さんだという感じですね。

和歌子 こんな印象が大事だと思うの。

らん 雰囲気かな。何となくって言う感じですね。

和歌子 私が好きな本に『パリ感覚』と言う一冊があります。

らん フランスのパリですか。

和歌子 パリが好きっていうとき、特定の場所もだけど、その町の雰囲気が気に入っている人が多いでしょ。いかにもパリだという感じですね。それが書名になっているのよ。宣長さんでも、この仕事、たとえば『古事記伝』を評価するとか、この歌が素晴らしいというのでなく、残されたいろいろな物から感じられるもの、宣長の魅力は、それがバラバラで無くて調和している所と言えば、少しはわかってもらえるかしら。

らん 「宣長感覚」ですね。
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by terakoya21 | 2011-12-20 14:56 | 不思議な宣長さん

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