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読書の春?!?! 春の読書?!?! (てらこや新聞61号 亀井先生のコーナーより)

1週間に1冊もしくは10日に1冊くらいは・・・と思い、読書を続けているものの、昨年は「相棒」のノベライズ本が主流で、紹介するまでに至っていなかったのですが、ここのところ立て続けに、紹介したい本を読んだので・・・今回は思い切って紹介しちゃいます!と言っても・・・「しちゃいます!」というほど軽い本でもないのですが。

まずは・・・「父親」  遠藤周作 著 集英社文庫 です。

戦中派※であり化粧品会社で働く石井菊治とスタイリストの仕事をする娘純子の父と娘の情愛を描く小説です。戦中派らしく、「けじめ」を大切にする菊治とその考えが古いと言い、父を愛しながらも少し疎ましく思う娘・・・のやりとりに私は自分と父の関係を思い浮かべました。私の父も戦中派です。でも、少し違うのは、私は田舎に生まれ育ち、末っ子の父親っ子として育ち・・・菊治の言う「けじめ」の方が、純子の考えよりわかるということ、そして、うちは父の方がリベラルであること。

それでも、親子が本当は愛し合っているのに、溝を作り、少し距離ができたり、激しく言い争ったり・・・ということに共感できるポイントが多くあります。私も何度となく父と、そういうやりとりをしてきました。

私は、カトリックのミッションスクールに日本でも、アメリカでも通っていました。そして、キリストの教えに納得がいかないことを見つけては、ブツブツ文句を言う生徒でした。が、高校卒業後読んだ遠藤周作氏の「沈黙」に感動し、なんだか今までのキリスト教に対するわだかまりが、すっと消え、理解してみようという気になったのです。それからというもの遠藤周作氏の本を読みあさりましたが、この「父親」を見つけたのは、つい最近、書店で卒業生のためのプレゼントを考えているときでした・・・。そして、そのとき読んでいた本を終わらせるや否や読み始めました。そして、一週間に1冊どころか、3日ほどで読みきりました。・・・半身浴をしながら読む私は、この3日間、のぼせて・・・大変でした(^.^)。

私がキリスト教徒になることはおそらく100%ないでしょうし、どちらかというと私は、イスラムや仏教の教えのほうが好きですが・・・それでも遠藤さんの描くキリスト教の考え方が、なんとも心に響きます。「けじめ」は戦争を体験した菊治が友の死に対して、生き長らえることのできている自分に科する十字架です。その十字架を背負い、自ら傷つきながらも、彼は、娘を愛し、許す・・・その一見当たり前のように見える姿に、人の親であることの偉大さを感じます。おそらく、私が親になることはないでしょうが、娘として・・・親の気持ちを理解できなくても、察する努力をこれからもしていきたいと思います。

高校生以上の子どもたちとその保護者の方々に、是非読んでほしいと思います。


そして、また・・・これは高校生以上の子どもたち、そして、全ての子の親御さんたちに読んでほしい本です。「下流志向」  学ばない子どもたち 働かない若者たち 内田 樹 著 講談社文庫 です。

この副題にドキッとして買った本です。ベストセラーになっていた頃には、「下流」という言葉が、なんとも嫌で・・・あえて読まないとそっぽを向いていたのですが、文庫になり、この副題に思わず目をとめてしまい・・・買って読みました。

先日、寺子屋を卒業した生徒とも、最後の議論をした本です。彼は、私が事務所においていたこの本の最初の部分だけを勉強の合間に盗み読み(^.^)し、文句を言っていたのですが、その後、私が読みながらその本の内容について話をするのを聞いて、反論がしたくて(?)買って読み始めたようです。20歳も年が離れていながら、結局、その年代にあった納得をし、読んだあとにも語り合い、皆に薦めたい本だねということになりました。

家でのお手伝いの大切さ、ニートへの取り組み、自立と孤立の混同、「金八先生」の不思議など・・・いろいろなことを・・・今まで私が感じていたことを・・・説明してくれていた反面、私は、次に何をするべきか・・・考え込ませ・・・再び迷路に送り込まれたようにも思いましたが・・・だからこそ、是非、子どもを持つ保護者の方々には目を通していただきたい本です。

私が、1つだけ、この本の内容に不満があるとすれば、アメリカニズムの終焉のような形で今の教育の破綻を捉えている話があったことです。私はアメリカで教育を受けていますが・・・日本で採り入れられているアメリカ的なものは・・・似非(えせ)だと思います。国の成り立ちが違う外国の方法を何にしてもそのまま採り入れることは不可能です。いろいろな良い点をうまく取り入れて、そして、日本的な大切なものは残し・・・全てを日本のものにしていくことが大切なのに・・・日本の制度は、それをかなり怠ってきているように思います。

私は、初めて高校生で、アメリカに出会ったとき、ひどく感銘を受けました。子どもたちの社会性を育てるための大人たちの取り組みと努力、そして愛情の深さに・・・。その一方で、私は、日本社会の伝統とそれにより与えられている安心を大切にしたいと思って帰国しました。でも、今、その両方がだんだんと失われていく日本社会に危惧の念を抱きます。そんな中、この本は一縷(いちる)の望みを私に与えてくれたように思います。大人たちが、今すべきことはなにかを考えさせられる1冊、子どもたちが今の社会で気をつけなければならないことを知らせてくれる1冊だと思います!


新学期が始まり、ようやく落ち着くころだと思います。・・・五月病を吹き飛ばすためにも、是非、読んでみて下さい!!!!

ちなみに皆さんは、どんな時、どんな場所で読書をしますか?私は・・・ジョニーに邪魔されないお風呂で、一日の疲れを癒しながら・・・です。

(Y.K)

※戦中派: 第二次世界大戦中に青春時代を過ごした世代
by terakoya21 | 2010-05-14 16:23 | 本紹介 Kamei

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