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寺子屋の日々 Days in Terakoya (てらこや新聞49号 亀井先生のコーナーより)

轍 -わだち-

「理系だから英語が苦手」という説が、まことしやかに通用しているようだけれど、私は、この説が全く根拠のないものだと思っている。「理系」とは、「理科の系統。また、それに属する分野・学科。理科系」(大辞泉)だそうだけれど、一般的にその理科系が好きな人、得意な人をいうのだと思う。私は高校時代、化学が好きで成績は学年でトップだったし、数学は好きではなかったけれど、得意な方だった。一方、社会は好きで、得意だったけれど、国語の成績は悲惨なものだった。だから、私は、おそらく「理系」と言われる人に属したのだけれど、いうまでもなく英語が得意だった。強いて言うなら「理系だけれど、英語が得意」だったのではなく、「理系だから英語が得意だった」のだと思う。

私はずっと、担任の先生達に言われ続けた・・・「こんなに国語のできない子が良い英語の成績を維持できるはずがないから、国語でも、もっと努力しなさい。」

私は、国語という科目は苦手だったけれど、こうして文章を書くことに苦痛を感じない。そして、理論的に考えることを、数学や国語だけではなく、英語で教わったと思っている。そんな私に言わせると、「理系だから英語が苦手」というのは、結局、思い込み、言い訳以外のなにものでもない。そして、その大人の勝手な思い込みや言い訳は、子どもたちの能力を制限しているように思えてならない。

子どもたちの可能性を、制限する大人の発想、発言、行動をこの仕事をしていると耳にし、目にし、肌で感じる。先月号で書いた失敗の機会を奪うことも子どもたちの可能性を制限しているけれど、自分たちの「言い訳」を子どもたちはしっかり聞き、見て、身につけていくということを忘れた大人たちの言動も、彼らの可能性を阻んでいると思う。

私の父は、英語の教師だった。そして、母は数学の教師だった。父は、英語やことば、社会についての知識は豊富で、数学は計算から苦手という典型的な「文系」といわれる人間だけれど、母は、コミュニケーション力という点では、父より優れた英語力を持っている。もちろん、彼女の学生時代の英語の成績は・・・芳しくはなかったようだけれど・・・。

「文系」・「文科系」とは、「数学、自然科学以外の学問分野。人文科学、社会科学の分野」(大辞泉)だけれど、この人文科学、社会科学には「経済」「経済学」が含まれ、経済学には、微分積分など数学の難関部分も必要となる。

そして・・・英語は、人文科学に属する「言語」だけれど、日本語と同様、自然科学も人文科学も社会科学も理解するために使われている言葉なのである。それができなければ、実際、理系の分野ができるといってもたかが知れている。・・・ノーベル賞受賞者の益川さんは英語が話せない、苦手という話があるけれど、それは「苦手」のレベルが違うだろうし、また、彼も「理系だから英語ができない」とは言っていないはずである。

私は、大学では外国語学部に進学した。大学院では、国際公共政策学部で都市・地域計画を学んでいる。結局、自分の進む道は、自分で決め、自分で切り開いていくもの・・・そこにある障害物が、「数学」という苦手科目でも、「英語」という苦手科目でも・・・私のように「国語」という科目でも・・・その先に行くためには克服していかなければならないものだ。私は、嫌いな国語を克服するために、高校3年生で週に15時間以上の授業を受け、強制的に勉強する環境を担任の先生に呆れられながら、作り出し、受験に成功した。英語に力を入れる高校に通っていた上に、難関といわれる大学の外国語学部を狙っていた私に、担任の先生は何度も「英語はこれだけしかとらなくていいのか」と念を押したけれど・・・私には、進むべき道の障害物をのけることしか頭にはなかった。今から考えれば結果オーライなのかもしれないけれど・・・それでも、若いときの目標を達成するための思い切りと思い込みほど大切なものはないと思う。

毎年この時期、生徒たちに進路の相談を受けていると自分の高校2年生の秋の進路相談での担任の先生のあきれ顔を思い出す。そして、生徒たちに言いたい・・・

コブクロさん『轍 -Street stroke-』の歌詞

自分の道は、自分で切り開くーその意志がなく・・・言い訳ばかりしたところで、人生は、好転していかない。神様は、人に越えられない試練を与えないという。今年度も我が生徒たちには自分の進むべき道が見えるまでは、今目の前にあることをしっかりとこなし、道が見えたら、その道を自分で切り開きながら、進んで欲しいと 思う。たとえその道に轍が、まだなかったとしても・・・。

(Y.K)
by terakoya21 | 2009-05-08 14:54 | 寺子屋の日々

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